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再戦 3

 俺は戦争孤児だった。


 南にある小国の、内戦の中で育った。


 なんで争っていたのか。俺には知る事は無かった。


 ただ、分かっていたのは父親も母親も戦争で死んだ事。そして戦わないと自分の身を守れなかった事だ。


 まだ十歳もいかない、子供でもだ。


 俺を拾った大人は、俺を人として見ることはなかった。ただ、落ちている武器と一緒。敵を殺せる道具とみなして俺を訓練した。


 誰も名前を……グランドルと呼んでくれなかった。


 成果を上げればそれで良し。死ねば食い扶持が減る。


 だから俺は自分を守るために剣を頼りに生きてきた。


 襲ってくる敵を殺してくれるこの刃だけを大切に生きてきた。


 だからこそ、狂わないと生きていけなかった。


 ひたすら殺した。


 殺した。


 殺した。


 殺した。


 何も考えず、ただ斬って殺した。


 そうして気づけば、俺は狂っ(こわれ)ていた。


 あの人(・・・・)に拾われて、厄災の力を手に入れて──



 胴体が裂け、大地に血だまりを作ってグランドルは倒れていた。


 「あぁ……俺は、死ぬのか」


 まだ意識がある事に驚いたミトラはその言葉に返答する。


 「まっ、助かる事はないだろうな」


 「そうか……」


 グランドルは、それでもまだ嗤っていた。


 最後まで折れた刃(求めた力)を握りしめて。


 そこで、グランドルの体に変化が起き始める。それは、溢れ出る血と共に黒く泥のような厄災の力が流れ出し、体がずぷずぷとその泥の中へと飲み込んでいく。


 ミトラは突然のことで驚きながらも、その泥の中に巻き込まれないように一歩、二歩と距離と取る。


 どんどんグランドルの体が見えなくなっていく。


 だが、それでも──


 「はっ、はははははッ!!気分が、良い!!」


 グランドルは嗤って消える。


 癒えない過去を背負ったまま──


 そして泥のような厄災の力は消えて、そこに残ったのは一本の剣であった。


 「これが刃の厄災の…核か」


 ミトラはその剣へと手を伸ばす。


 やはり厄災に関するモノであるということもあり、触れるのも少し怖いのだが放置する事もできない。また黒いローブの奴らが回収して、再び利用するかもしれない。


 怖い気持ちを抑え、その剣を手に取る。


 もしかしたら、厄災の力で自分が狂ってしまうかもしれない。支配の厄災のように肉体を奪われてしまうかもしれない。そんな恐怖を抱えながらmしかし、何も起こることはなく、ミトラは無事に剣を持つことができた。


 「……とりあえず、これはアフラ様の所へ持って行った方が良いわよね」


 そうしてそこから立ち去ろうとした時


 「いいや、それは私のモノだ」


 その声と共にドンッ!と背後から強い力がミトラを襲う。


 「な……に…が…?」


 意識が遠のきながらも、後ろにいる者をミトラは確認する。


 そこに立っていたのは、金色の髪の……二本のツノが生えた女であった。


 「お前は、支配の──」


 「違う、私はサルワだ」


 そう言って、トドメと言わんばかりにミトラの腹めがけて蹴りを入れる。


 「ッ……!」


 ミトラは完全に意識を失い、厄災の核である剣を奪われてしまい、その場に倒れるのであった。

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