再戦
一方、神都の東南方面では──
「ちッ、うざったいな!」
ミトラは襲い掛かる化け物を斬り伏せていた。
あらゆる方向からタコの触手が伸びて襲い掛かってくるが、さすがは剣聖。ミトラはズバズバズバッ!と無詠唱で上級剣術を連続発動させて斬り落とす。そして、腕が再生しきる前にトドメを刺し、無傷で数十体モノ化け物を殺す。
だが、ぞろぞろと何処からともなく這い出てくる。
「多いな、あのローブの奴ら、一体何をしたの?」
神都の警備もそんな甘くはない。
外壁には神々が造った数百メートルという巨大な防壁。そして街中には世界中から優秀な冒険者を集めた者たちが活動の中心としている冒険者ギルド連合本部に、魔術研究組織としてはトップクラスの功績を持つ優秀な魔術師が多く所属する魔術学連合。この二つの組織を相手にここまで翻弄して都市を半壊させている黒いローブの集団は本当にどうやってここまで追い詰めたのか。
そのように考えていると……
「おいおい、ミトラじゃねェか!」
その声の方向をミトラは確認する。
それは、今も崩れそうな建物の屋根の上に上っている男であった。
その身、姿は黒いローブを身に纏い、両手には剣が握りしめられている。
「その恰好……お前も厄災の力を使う者か」
「その通り!」
男は屋根の上から降り立ち、ミトラの前へと現れる。
「俺はグランドルだ、よろしくな!」
そう名乗った男の纏う雰囲気を、厄災と戦った経験のあるミトラはやはり厄災と同等の力を持っていると判断し、強く警戒する。
「おいおい、戦う気満々だねェ。剣聖ミトラ・アルファイン、アンタとの戦いは楽しみだったんだよ」
そう言うと、男は体外へと魔力を放出。空気を漂い出す魔力は集まりだし、剣の形へと至る。そして、二つの刃となってそのまま現実へと具現化される。
両手に持つ剣と、新たに具現化されて宙を浮かぶ二つの剣。合計四つの刃がミトラと対峙する。
「薄々気づいているかもしれないが、俺の持つ力は刃の厄災と同じモノ。つまり、アンタの討伐した厄災と同じ力を持つのさ。だから、俺が仇をずっと討ってやろうと思っててな!!」
「一度倒した相手に負けると思っているのか?」
ミトラは一本の剣を構える。
刃の厄災とミトラの戦いが再び始まろうとしていた。
二人はお互いを観察し合う。
最初に動き出したのはグランドルであった。ダンッ!と強く地面を蹴り上げ、大きく間合いを詰めながら右手に持った剣を大きく振り上げる。
それに対し、ミトラは剣を下に向け、強く斬り上げる。
ガキッ!と鉄同士のぶつかる音と共に大きく火花が散る。
どうやら、パワーはミトラの方が強かったようだ。一気にグランドルが態勢を崩す。
ミトラはそこから追撃入れようとするが、それをカバーするように浮かんでいた二本の剣が舞い始める。
ヒュンッ!と風を切りながらミトラへと襲いかかるその剣を完璧に見切ってミトラは素早く避ける。
だが、そこに態勢を立て直したグランドルが再び接近する。
今度は両手の二本を構え、同時に右から左へと薙ぎ斬ろうとする。
さすがにこれをパワーを押し勝つことは出来ない。また受け止め切れる自信も無いうえ、無事に受け止められたとしても残りの二本で仕留めに来るだろう。
そのように察知したミトラは大きく飛び跳ね、距離を取る。




