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神都崩壊 5

 だが、さすがはべス。最終的に突き刺さった腕はたった八本で、残りの腕は全て斬り落としていた。べスの周りにはその残骸と血で溢れかえっている。


 また刺さった腕も引き抜き、立ち上がる。


 「さて、腕がなくなって戦闘手段も残ってないキサマらをあとはぶち殺すだけ──」


 それは、まるでトカゲの尻尾のようだった。


 化け物の斬れた腕の切断面からニュルリ、と新たな腕が生えてくる。


 「おいおい、マジかよ。再生能力持ちかよ」


 これほどの再生能力を持った魔物は珍しくは無い。先ほども例えで使ったようにトカゲのように失った部位を再生させる生物は意外といる。しかし、それらは数日から一ヶ月ほどの時間をかけて再生させる。さすがに数秒と経たずして消失した部位を再生させる生命というモノは基本、存在しない。


 「分かっちゃいたが、やはり自然の生態という枠組みから外れた化け物ってわけだな」


 どうせ俺は犯罪者。傭兵として戦場を自由に駆け抜け、人を殺し続けていた。だが調和神アフラに目をつけられ、冒険者になって、成り行きで特異課を任されているだけ。


 今の俺は神の計画の手助けをさせられている歯車に過ぎない。


 ならば、ここで死ぬのも悪く無いのかもしれない。


 だが……。


 「自分の仕事も出来ない奴とは思われたくは無ェからな。テメェら全員、ここから先は絶対、通さん。ぶっ殺して死んでやるわ!」


 そうしてべスが覚悟を決めたその時


 何十体もいた化け物がどんどん倒れていく。


 そして、最後に立っていたのは


 「大丈夫か、ベス」


 自分の部下であり、ここにいないはずのトーゼツであった。


 「一応、俺の部下だろ?様でもつけろ」


 「柄じゃない。しかし、さすがのアンタでもこれほどの量はキツイみたいだな。血まみれだぞ?」


 「ほとんどは返り血だ。俺は五体満足だ。それよりセレシアに行っているはずのお前がどうしてこんな所にいるんだ?帰ってくるにしろ早すぎるだろ」


 「そりゃあ、メイガス・ユニオンから情報を聞き出したからだよ」


 「んじゃあ、これ全部、アイツらの仕業ってことか?」


 ここでトーゼツは詳細を語るために黒いローブの者たちが関わっている、と話しそうになるがすぐに気づき、グッと堪える。


 (そういえば、べスは一応、部外者だったな)


 黒いローブの集団は極秘情報。本部内でその情報を知っているのは黒いローブの集団と遭遇したトーゼツ達と調和神アフラのみだ。


 だったら、今はとりあえずこのままメイガス・ユニオンの仕業と思わせておく方が良いかもしれない。それに今回の事件に関わっているのだからあながち間違いではない。


 「まっ、そういうこと。とりあえず、ギルド本部に戻りながらどういう状況か説明してもらっても大丈夫か?」


 そうしてこの街に起こっている事をトーゼツは知るのであった。


 

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