神都崩壊 4
数十分後……。
いつもであれば、もっと早く着いているはずなのだがやはり化け物と戦いながらだったからなのか。トーゼツは息切れしながら目的地である冒険者ギルド連合本部付近へとやってくる。
そして、周囲から先ほどまで全く感じなかった人の居る気配があった。戦いの音に、人の叫ぶ声。どうやら冒険者が化け物と応戦し、街の住民を守っているようだ。
「やっぱこっちに来て正解だったな!」
トーゼツはその駆けていく足をより速くしていく。
「ちぃっ!多すぎる!」
一体、どれほどの化け物を相手してきたのか。汗を垂らしながら、身体中に血飛沫を付着させて戦っているのはミトラに剣を教えている先生であり、トーゼツの上司にあたる男。特異課の課長ベスであった。
バスバスバスッ!とあっという間にその通りに居た化け物を殺すのだが、またぞろぞろとあらゆる所から現れる。路地裏や、半壊した建物の中、通りの奥からべスを追い込むようにやって来る。
見た感じ、十五体以上はいる。
「ったく、とんでもねェな」
剣に付着している血肉や油を布で拭き取り、また戦闘準備をしている最中、ポケットに入れていた通信系の魔術が付与された木の板が震え出す。
ベスは木の板を取り出し、魔術を発動させる。
「誰だ、こっちは今、忙しいんだよ」
『べス!厄災の進行方向が変わってそっちに行ってる!』
その声は部下であるポットバックであった。また彼も戦場に出ているようで、通信越しから戦闘音が聞こえて来る。
「マジかよ!本部の方には!?」
『そっちには影響は無いみたいだぜ?アフラ様の加護ってやつがあるからな』
「だがそれも直撃すれば意味がないがな。ったく、俺は一旦下がる」
『了解だぜ』
そこで通信は終了する。
(憤怒の厄災に人型の化け物……謎のローブ集団。くそっ!冒険者ギルド連合本部の人員総動員で状況が掴めきれないとはな。ったく、アナトがいればな!)
そのように考えながら、下がろうとするが化け物達は問答無用で襲いかかってくる。
それに対しべスは正面から来る攻撃を捌きながらバックステップで下がっていくという器用な対応をする。しかし、相手は一体数十本を腕を持つ化け物。それが十五体以上。さらに追い討ちをかけるようにどんどんあちこちから駆け寄ってくる。
五十本……百本と襲ってくる腕の数は増えてくる。
そして、とうとう捌ききれなくなり、攻撃してきていた化け物の腕一本がべスに到達する。
「ッ!」
そのタコの腕は鞭のようにしなり、強くベスを打つ。べスの体に強い衝撃が疾り抜け、吹っ飛ばされると何度か地面をバウンドし、建物の壁へと背中が叩きつけられる。
これを機と見た化け物が再び一斉に攻撃を開始する。
「上級剣術〈華麗乱撃〉!」
べスの剣が向かってくるタコの腕を次々と切り落としていくのだが、やはり一斉に向かってくる百本以上の腕を対処するのは難しかったようだ。一本、また一本と腕が直撃してくる。
「くッ!」
今度は鞭のようなしなやかさは無く、まるで槍のように腕が突き刺さっていく。




