神都崩落 3
トーゼツは魔力で体を覆い、衝撃に備える。
やはり千メートルから人、一人が落ちるとなるとそれはとてつもないエネルギーになる。ドォン!とまるで大砲の玉でも落ちてきたかのような衝撃が周囲に広がる。
「ちぃ……痛てて」
さすがに魔力で守っていたとはいえ、そのダメージを完全ゼロにすることは出来なかったようだ。と言っても、痛みがあるぐらいで、怪我一つも無かったのだが。
だが、痛いことには変わりない。
「防御魔術でも展開しておけば良かったか?」
なんと思うトーゼツだったが、シャルチフの戦闘でまだ魔力消費に肉体疲労を引きずっている。チャミュエルにある程度、回復させて貰ったとはいえ完治ではない。
これからまた激しい戦闘が続くかもしれないんだ。痛いだけで済むことに防御魔術を使うというのは愚かな行為と言えるだろう。
「まっ、我慢すれば良い話だ。とりあえず今は──」
そう言ってトーゼツは指輪の力で空間に穴を開け、背後に向かって剣を振り下ろす。一連の行動は一瞬であった。
そこに居たのは、人の形をした化け物であった。
目は充血しているなんてモノじゃあ説明できないほど赤く染まっている。また犬歯が吸血鬼かと思わせるほど大きくなっている。しかし、そんなところは問題じゃない。まだ人間の形が留まっているほうだ。
それの肌は青黒く蠢いている。そして体の所々がまるで風船のようにぶくぶくに膨れ上がっては、すぐに萎んでいく。腕は数本に引き裂かれたように分かれている。そして動きは骨がないのか、まるでタコのような軟体動物の動きで地面を這っている。
「う…ァォ……」
呻きながらこちらに向かってくるその化け物をトーゼツは再び強く斬りつける。が、その化け物は魔力を纏った腕でその剣をはじく。だが、魔力の纏い方が甘いのか。はじいた腕に切り込みが出来ている。
(見た事ない魔物だな。敵意……は感じるが、魔物化したばっかりなのか。上手く体を動かせていないな)
そのように分析している最中、その化け物は数十本もある腕で襲いかかってくる。ゴムのように伸縮性があるのか、それは大きく伸びている。
トーゼツは剣で来た腕全て斬り捨てると、化け物との間合いを一気に詰め、今度は頭を斬り飛ばす。
そうして戦いの終わったトーゼツは立ち上がり、周囲を見渡す。
どうやら落ちた場所は人通りの多い大通り。冒険者連合本部や調和神アフラのいるあの異様な建物へと繋がっている街の中でも重要な道。そんないつもは賑やかで、楽しい通りでも、やはり上空から見ていた通り多くの建物が半壊している。
そして、その通りのあちこちに先ほどと同様の化け物が蠢いている。
「ったく、黒いローブの奴らは一体、何をしたんだ?とりあえず、冒険者ギルド連合本部へと向かうか。あそこなら大丈夫のはずだ」
そうしてトーゼツは襲いかかってくる化け物を相手しながら本部へと向かっていく。




