神都崩落 2
魔法陣の中に隣にやってきた学生にトーゼツは質問をする。
「しかし、俺たちについてくるってどういうつもりなんだ?お前は冒険権者じゃない。シャルチフから俺を助けた時点でメイガス・ユニオンを出ていく覚悟があるのはなんとなく分かってはいるが、だからと言ってついていくことはないだろ」
そのトーゼツの言葉に学生は真っ直ぐな目で答える。
「自分のやりたい事をようやく見つけたんです。でも、それはまだぼやけて見えるだけで、はっきりとは見えないんです。だから、あなたについていきたい。そうすれば何かが掴めると思うんです」
「そうか、何かを掴めると良いな」
「はい!」
これらの様子を見てミトラは『またトーゼツが他人の心を奪ってるよ』と思うのであった。
エルドやアナーヒターなど、色んな人がトーゼツに憧れ、惹かれ、好きになって、そうして彼についていこうとする者が多い。チャミュエルからも気に入れられたようだし、本当、敵味方関係なしに彼は巻き込んでいく。
本当、そうやって無意識に誰かをひっかけるのは止めて頂きたいものだ。
(まっ、そういう私もトーゼツのことが好きなんだけどね)
とこの気持ちを心の中で留めておくミトラであった。
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。俺はトーゼツでこっちはミトラ。お前は?」
「俺の名前はロームフです」
「じゃあロームフ、これからよろしくな!」
そのように改めて挨拶をしている最中、チャミュエルの展開していた魔法陣が動き出す。
「それでは、転移を開始しますよ」
その言葉と共にチャミュエルの魔力がトーゼツ達を覆い、周囲が光に溢れる。そして、数秒後にはチャミュエルの目の前から三人の姿は消えるのであった。
「それでは、健闘を祈りますよ」
トーゼツ達は気付けば目の前に空が広がっており、浮遊感を感じていた。やはり緯度、軽度が違う場所へ転移したため当たり前なことだが、天気が違う上にセレシアが夜だったのに対し、神都は昼前のようだ。明るく世界を太陽が照らしている。
そんな平和な空の下にある神都の所々には煙が上がっており、建物の多くが半壊している。シャルチフのいう通り、黒いローブの奴らが侵攻してきているようだ。
だが、とりあえずそれよりも──
「ここ上空じゃねェか!!」
この感じていた浮遊感はトーゼツたちが空中にいるからだった。
また、すぐさまその浮遊感はなくなり、一気に重力が襲いかかる。
ミトラは目測と感覚、経験から地上までの距離が約千メートルあることを理解する。
(この程度の距離だったら、まだ魔力で身を守れば助かる!)
地上がどうなっているか分からないからこそ、同じ場所に着地して共に行動を続けたいところなのだが、やはり高所ということもあってか。三人に強い突風が襲いかかる。
このままでは散り散りになるだろう。
「トーゼツ!ロームフ!ここからは一旦、別行動だ!」
「了解!」
「……分かりました!」
トーゼツは軽快に、ロームフは残念そうにミトラの言葉に答え、それぞれが着地に備える。




