神都崩落
場面は戻り、メイガス・ユニオンの訓練区にあるトレーニングルーム。
そこにはボコボコになって気絶したシャルチフ会長と、大きな魔法陣を魔力で床に描くチャミュエル。そして、魔法陣の中に入るトーゼツ、ミトラ、エルフの学生の三人が入っている。
「しかし、シャルチフの言う事は本当なのか?」
トーゼツ達が吐き出した情報によると、黒いローブの集団と手を組んで神都侵攻を目論んでいるらしい。神代の遺物略奪事件はこの侵攻作戦に必要なモノを揃えるためのものだったという。
しかし、シャルチフにもどのような作戦を黒いローブ達が取っているか知らないらしい。段取りとしてはまず黒いローブの集団が攻め、冒険者ギルド連合や魔術師連合の力を削ぎ落とし、さらに調和神アフラの殺害。そこからメイガス・ユニオンが大規模侵攻を行うという。
そして、もしローブの集団が失敗すればすぐさまメイガス・ユニオンは撤退。無関係であるということを貫き通せば良いと考えていたようだ。
「アフラ様の殺害なんて可能とは思えないんだがな」
トーゼツは調和神アフラを直接見ただけで分かった。あれは確かに神の最上位に位置していると断言できるほどの格と力があることを。
だからこそ、人間程度に打倒出来るとは信じられん。
「さぁね。だが、本当であればかなりヤバい状況だぞ?アイツらは厄災の力だって自分のモノにしているんだ。そんな奴らが考えることなんて計り知れないだろ?」
アナーヒターの言う事も一理ある。
「さて、転移の準備が完了しました。そちらも準備は?」
「準備はできた。問だが、後は任せてくれと言っていたがアナト達はどうするつもりだ?」
「私が今すぐ直接、伺いに参り、状況を説明します」
アナト達が敵対組織であるチャミュエルの情報を信用してくれるだろうか。
だが、どうこうする時間はもうない。
ここはチャミュエルを信じるしかないだろう。
「さて、魔法陣の展開も終わりました。お互い準備できたことですし、あとは──」
チャミュエルが問題がないか、念の為、もう一度、確認作業をしている最中
「遅れました、自分も準備オッケーです!」
ドアを勢いよく開け、慌てて入ってくるのは、トーゼツが道案内役として使っていたあの学生であった。
彼は先ほどの白衣を着た研究者としての格好から変わり、腰に魔術書がぶら下がっており、また水晶として加工された魔鉱石が埋め込められた杖を背負っている。
「へぇ、学生が使っているわりには良い杖じゃないのか?」
「自分で造った杖なんですよ。この魔鉱石は余ったからと先生……つまりメイガス・ユニオン内の教授に譲ってもらったものを自力で加工したんです」
「へぇ〜、すごいな」
トーゼツは杖をまじまじと見る。
「はいはい、そういうのはあとででも出来るでしょ?早く魔法陣に入って」
そうミトラに言われて「あっ、はい!」と学生が一緒に入ってくる。




