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刃の厄災 2

 ミトラは体内の魔力を一気に外部へ放出。その勢いにより、空気が揺れ、突風を生む。


 「ほう、なかなかの魔力量だな」


 刃の厄災もまた、彼女のその体から溢れ出た魔力量を見て、感嘆していた。彼も過去には何度も人と戦ってきた。そして、何度もその挑戦者を殺してきた。


 その中でもミトラの魔力量は桁違いであった。


 そこからさらに彼女は魔力を体と剣に纏わせ、自分が出せる最高の剣術を繰り出そうとする。


 「絶大剣術!!」


 彼女の叫びと共に、剣は魔力の光で輝き出し、この狂気の振り撒かれた周囲の世界を照らし出す!


 「来るか」


 それでもなお、刃の厄災は動じることなく、大胆に構える。しかし、それは決して戦う者の構えではなかった。両手を広げ、改めて発言通りの防御しない、避けもしないと言ってきているかのような構えであった。


 「後悔するなよ!」


 ミトラはにやり、と笑う。


 嬉しくないわけがない。


 最初から、確実に自分の最高の剣術を発動し、当てられるのだから。


 「〈ゼヴェル〉!」


 彼女の詠唱と共に魔力が炎のような真紅の色と、全てを浄化させてしまうかのような白色に分かれ、その二つが剣先を中心に螺旋のように渦を巻く。そして、彼女はその剣を思いっきり刃の厄災に向けて突き刺す。


 その威力はかなりのものであった。


 衝撃は地面を抉り、先ほどの魔力を体内から体外へ放出させた時以上の突風を生む。


 この一撃を喰らえば、どんな魔物であろうと、どんな戦士であっても、死ぬだろう。しかし—


 「なるほど……良い一撃だな」


 刃の厄災は、ビクともしていなかった。


 いいや、ダメージがゼロであったわけではないようだ。奴の鎧はへこみ、また全ての衝撃を完全に受け止めきれず、数センチというわずかな距離だが、後方へと下がっている。


 しかし、仁王立ちのその姿は変わらない。


 (なんて奴だ……!)


 あと、何回この攻撃を与えれば倒せるのだろうか?


 ただでさえ、膨大な魔力を消費するというのに、それを数回……いや、何十回も与えなければいけなくなる。


 「では、我の攻撃といかせてもらおうか」


 その発言を聞いて、すぐにミトラは防御の構えを取る。


 頭か、腹か、足か、腕か。それとも、上から下へと一刀両断してこようとするのか。はたまた、右から左へと、薙ぎ払うように切断するのか。分からないが、とにかくどんな攻撃が来ても良いように、構えていた。


 しかし、それは一瞬。


 「ッ!」


 足が地面から離れていた。


 彼女自身は、突然のことで理解出来ていなかった。


 その後、ドン!と地面に何回も、叩きつけられ、転がっていく。


 (吹っ飛ばされたのか!?)


 そうして、もうしばらく転がり、ようやく止まった所で頭の整理がつき、状況を理解する。


 (腹が…痛い……。ここに奴の大剣が当たったのか。いくつかの肋骨ろっこつが折れているな。分からないが、多分臓器にもダメージがいってる!)


 その時、喉から何かが込みあがり、何かが飛び出してくる。


 「ご、ゴほォ!」


 それは、熱く、赤く、そして大事なものであった。


 口の中に鉄の味が広がり、さらに彼女の気分を不快にさせていく。

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