隠された真実 22
そんな緊張感が奔る空間の中、ガチャリ、とドアが開く音がその静寂を破る。
「シャルチフが喋り始めました!」
学生のその言葉にトーゼツとチャミュエルは驚き、喜ぶ。
「話はあとだ。今は情報を聞き出す事が優先だろ?」
そうしてトーゼツはさっさと部屋の中へと戻っていく。
「……アナタが信用しようと、しまいと、私の考えは変わりません。それにあのトーゼツ・サンキライという少年。とても面白い。私はもうしばらく、彼と共に居るつもりですから」
そういって、トーゼツに続き、部屋に入ろうとするその時
「アンタもあの計画で実験体になった一人だろ?」
そのミトラの言葉に、チャミュエルの動きが止まる。
「何処でそれを?」
「私もトーゼツ同様、ここで情報をかき集めてたんだ。その過程で知ったんだよ。詳細は知らないんだけどさ。アンタら……一体、何を考えているの!?」
ミトラは知った。
メイガス・ユニオンが隠しているあの実験計画を。そして、その実験体になっていた半分以上がチャミュエルのように四大聖や、ミトラでも聞いたことのある名の者ばかり。
そして実験内容はとても人道的とは思えなかった。
他者の命をなんとも思わない。人がどう成ろうとも構わない。
そんな隠された計画知った。
ゆえにミトラはチャミュエルを信用できなかった。
「…………どこまで知っているのか、分かりません。が、あの計画はメイガス・ユニオンが設立された初期からありました。私もあの計画のやり方には賛同していません。実験体になったのも任意ではありませんでした。しかし、あの計画こそがメイガス・ユニオンの命題。アナタがどう言おうと、冒険者ギルド連合から非難されようと、この計画が揺らぐ事はありませんので。とにかく今はシャルチフ会長から情報を聞き出すのが先でしょう?」
そういってチャミュエルは無詠唱、無魔法陣で下級魔術を自分にかける。するとチャミュエルの顔が暗くなり、表情が見えなくなる。
「同盟関係を結ぶとはいえ、組織を裏切るわけではありません。一応、会長の前では顔を隠すとします。私はまだこの組織に居るつもりですからね」
そう言ってチャミュエルもトーゼツに続いて部屋に入っていく。
「………」
ミトラのその複雑な顔は、ただ信用できない、意図が理解できない、チャミュエルに対して深く疑っているだけの表情ではない。
彼女は認めていた、あの隠された計画の実験体として参加していたと。
であれば──
(チャミュエルは神と同等の力を持っている…ってことになるけど……)
ということはまだ計画は成されていないということになる。
(やっぱり、黒いローブについてもそうだけど、この計画の件もアフラ様に報告した方が良さそうね)
ミトラはそのように思うのであった。




