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隠された真実 21

 少し時間が過ぎ、再びトーゼツの視点へと場面は戻る。


 「はぁ……はぁ……!この程度で…情報を吐くわけが──」


 トーゼツの目の前にはロープで硬くグルグル巻きにされて身動き出来ないシャルチフが居た。彼は汗だくで表情は険しいものだった。しかし、その口から出る言葉は強気なモノであった。


 「んじゃあ、まだ耐えられるか」


 そういってトーゼツは魔力で空中に魔法陣を描く。そして右手がその魔法陣の中を潜り抜けると、そのままシャルチフの頭を鷲塚む。。その瞬間、シャルチフの脳内に強い衝撃は駆け抜けていく。


 「ァァァァ!!ァ……が、グ、ォ…ォォ!」


 口が大きく開き、そこから涎が洪水のように垂れ流れる。


 「はぁ……はぁ……」


 記憶が曖昧になってくる。


 魔術で直接、脳に衝撃を与えているのだ。


 意識が朦朧としてくる。


 今は何時で、今日は何日か。


 自分は一体、誰なの──


 「くッ!」


 シャルチフはゴンッ!と自分の頭を壁にぶつける。


 外部からの痛みで意識を覚醒させる。


 「かなり神経にダメージ与えてるんだがなぁ……」


 「魔力は大丈夫か?」


 そのように心配の声でトーゼツに話しかけるのは学生であった。


 「あぁ、まだ分けてもらった魔力が少し残ってるからな。だが、なかなか口を割らないなぁ」


 追加で魔術をかけようとトーゼツが右手を再び近づけるその瞬間、コンコン、とドアのノック音が響く。トーゼツは警戒する気配もなく、ドアへ近づく。


 「拷問を続けていてくれ」


 「分かった」


 そうしてトーゼツは学生に一旦、任せて部屋の外に出る。


 そこに居たのはチャミュエルとミトラであった。


 「おっ、来たんだな。ミトラ!」


 「来たよ……ってそれどころじゃないんだけど…。このエルフってまさか──」


 「私の名前はチャミュエル・ローリィです。気軽にチャミュエルと呼んでください」


 「……えーっと、トーゼツ。これは一体、どういう状況?」


 そうして混乱しているミトラにトーゼツは説明を始める。


 チャミュエルとは一時的、個人的な判断とは言え同盟関係を結んだ事。シャルチフ会長を捕まえて情報を吐き出そうとしていること……。


 「聞いた所で色々と疑問しか浮かばないんだけど……うーん、何からツッコめば…とりあえず解決しときたいのは……ローリィさん──」


 「チャミュエルです」


 一応、初対面だし、信用出来るか、分かんないし……一旦、ファミリーネームで呼んだのだが、それを訂正させるチャミュエル。ミトラは「じゃあ、チャミュエル」と言い直し、話を続ける。


 「アンタ、メイガス・ユニオン内で一、二を争う実力を持つ剣聖……いいや、メイガス・ユニオンらしく言うのであれば魔剣術師かしら?」


 前にも説明した通り、基本、剣術や槍術、弓術は魔術とは別枠だ。しかし、魔術学に置いて、魔術同様、同じく魔力を用いた術であればそれは剣術でも槍術でも魔術と定義される。


 そして、メイガス・ユニオンは魔術学の研究機関。そのため、剣士でも槍士でもメイガス・ユニオンでは魔術師と呼ばれている。チャミュエルは世界的に見れば剣聖という呼ばれ方をされるエルフだが、ここでは魔剣術師というのが正しい呼び方になるだろう。


 「そうですね、私の職はあなた方のいう剣聖、という職になりますね」


 「そんなあなたがどうして私たちと同盟関係を結ぼうっていうの?」


 「……信用できませんか?」


 「出来ないね」


 ミトラは睨み、チャミュエルは見つめている。


 互いに眼を見て、奥底の思考を読み取ろうとする。

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