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隠された真実 19

 そこはメイガス・ユニオンの東にある訓練区。


 研究をメインとする魔術師ではなく、戦士として活躍している魔術師の活動場所だ。また戦士を目指す学生などの育成にも一部が使われている。


 と言っても、訓練区の半分以上が実践訓練場。ほかの区のように書類が保管されていたり、精密な魔術器具が置かれていることなどない。ただ広く、どんな衝撃にも耐えうるほど硬い壁と天井に床があるぐらいなものだ。


 ゆえに学生区はほかの区に比べて警備が薄い。というより、警備する意味がゼロの区なのだ。


 そんな訓練区にあるトレーニングルームにチャミュエルが居た。


 そのトレーニングルームは戦いの基礎となる肉体を強くするためのもので、ダンベルや懸垂の出来る器具などが設置されている。これらの器具を使用する際、ほとんどの魔術師は素の肉体を鍛えるために、魔力による肉体強化を行わずに筋トレをしている。


 「予定よりも手こずっているのでしょうか?」


 そういってチャミュエルは壁にかかっている時計に目をやる。


 トーゼツは四十分で合流するという約束をしていた。なのに、十分以上も時間が遅れている。


 (何かあったのかも?であれば、同盟を結ぶのに不相応の相手だったといことかしら?)


 なんて思っていると、ガチャリ、と部屋のドアが開く。


 「ま……またせた……なッ!」


 そこに現れたのは、血まみれ、傷だらけのトーゼツ。その後に続いてやってきたのは白衣を着た学生。しかし、白衣の端は燃え尽きており、体中が火傷だらけだ。


 そして学生がズルズルと荷物のように引きずって運んでいるのは──


 「シャルチフ会長!?」


 どうして、なぜ、どういう経緯で!?


 「いやぁ、シャルチフに見つかっちまってな。それで戦闘になって無事に倒せたんだよ。けど、目的の禁書庫の中には入る時間も余裕も無かった。だから、ぶっ倒したシャルチフ本人から色々聞かせてもらおうかなって思ってな!」


 いやいやいやッ!だからと言ってメイガス・ユニオン全体を把握しているだろう彼を連れてくるなんて信じられない状態!


 でも、このイカレ具合……予想外の行動……それは──


 「あはははははははッ!嘘でしょ!?どんな書類やら物的証拠を持ってくると思えば……ははははッ!繋がってるシャルチフ本人から聞き出そうなんて……例えシャルチフと戦って倒したとしてもそう考える人なんてそうそういないですよ!」


 本当。馬鹿馬鹿しい話だ。


 だが、とても面白い発想だ。


 シャルチフは確実に情報を持っている。だが、簡単に話すとは思えない。それこそ、拷問する側の技量と、どちらが先に根を上げるのか。吐き出すのを諦めるのかと忍耐力を必要とする。


 だが、それでも情報を聞き出す事に成功すれば、その情報は書類や物的証拠なんかよりも具体的に、それでいて絶対的に信頼出来る情報が手に入る事になるだろう。


 チャミュエルは呼吸を整え、笑いを止める。


 「君の評価を見誤っていたみたいですね。アナタは予想を裏切り、期待以上のモノを用意してくれました。馬鹿と天才は紙一重と言いますが、その評価こそアナタに相応しい」


 そういってチャミュエルはトーゼツに近づくと魔法陣を展開して、回復魔術をかけてくれる。


 どんどん痛みが引いていき、身体中の傷が癒えていく。


 「……その評価は褒めているのか、それとも貶しているのか、分からんぞ」


 トーゼツは回復魔術を受けながら、微妙な表情で言い放つのであった。

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