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隠された真実 18

 トーゼツとシャルチフの殴り合いは互角だった。


 炎で全身火傷状態のトーゼツだが、一歩も退く事はなく、ドンドン拳を放っていく。対してシャルチフも老体というのにトーゼツの拳に押し負けることなく、その炎で押し返していく。


 攻防……なんて状況ではない。防御、守りなんて一切、考えない動き。お互い拳を喰らい、お互い拳を放ち、鮮血を散らしていく。


 まさに拮抗状態。


 こうなると、パワーで押し通るのではなく、この激しい攻撃にどちらが長く耐久できるかどうか。


 (このままいけば、先に倒れるのはシャルチフの方!だが……)


 シャルチフが倒れる頃にはトーゼツの体力も、魔力もすっからかんになっているだろう。だが、トーゼツはシャルチフを倒したあと、ミトラと合流してメイガス・ユニオンからの脱出をしなければならない。こんな派手に動いているんだ。今はまだ大丈夫かもしれないが、すぐに警備兵が増員されて脱出が困難になる。そうなると警備網の強制突破しなければならない状況になるのも容易に想定できる。


 そうなれば、戦闘可能な状態でこの戦いは終わらせたい。


 (術発動できるぐらいには魔力は残っているが……決定打になるような術を発動させるなら、もう少し魔力も練っておきたいんだが。ちぃッ!術発動どころか、魔力を練る隙も暇も無ェ!!)


 痛覚遮断の魔術さえ行っていないトーゼツは、その激しい痛みの中、必死に思考しながらもこの状況をどうにかする手段が見つからない。


 そこにドッ!とみぞおちにシャルチフの拳が入り、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように喉が動かない。脳に酸素が回らない。


 「考え事か?まだまだ余裕そうだな!!」


 さらにドンッ!と炎を纏った拳は問答無用で放つ。


 「くッ!?」


 さらに痛みで思考が鈍っていく。


 「これは俺の勝ちか?人族のくせによく頑張ったよ」


 全ての炎を右拳に集め、トーゼツにトドメを刺そうとする。その時──


 「ッ!」


 シャルチフは背中に鋭い痛みが襲い掛かる。その背中の痛みがどんどん体に侵入して、最後には胸にその痛みの正体が現れる。


 「なッ……これ…は……!!」


 赤に染まった、冷たく光を反射する鉄の塊。先が尖っていて、それでいて綺麗に研がれている。


 「すいませんね、会長」


 「どうし、てだ……貴様は………」


 「これからは自分の想いにだけは裏切らない事にしたんですよ」


 「キサッ……マァァァァァァァァァ!!!!」


 シャルチフの怒りの雄たけびだった。


 しかし、学生は怯まない。


 「もう充分、時間は稼いだだろ!?今がチャンスだ、いけ!!」


 学生は叫ぶ。


 「もちろん!上級魔術!」


 トーゼツは詠唱を開始すると共にに魔法陣が展開される。しかし、同時に頭に激しい痛みが奔り、トーゼツの鼻から赤くて温かいモノが垂れてくる。


 (さすがに上級魔術……杖無しじゃあきびしいか…。でもッ!!)


 トーゼツは叫ぶ。


 「〈ウェルテクス〉!」


 トーゼツの放った拳は魔法陣を潜る。その時、腕に纏っていた魔力は空気中の水分を集め、水を生成。その水はぐるぐると激しく渦を巻き始める。


 シャルチフの炎は水の渦に搔き乱され、掻き消していく。


 「ふざッ……けるなァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」


 シャルチフは抵抗する余裕はなく、トーゼツの拳を真正面から喰らい、そして──


 「俺の……勝ちだッ…!」


 満身創痍のトーゼツに、火傷だらけの学生の二人がそこには立っていた。

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