隠された真実 13
トーゼツは再び魔力を体内から放出。剣に纏わせ、戦闘態勢に戻る。
シャルチフも拳に炎を纏わせ、トーゼツを見下す。
「ほう?まだやるというのか……」
「一発攻撃を受けた程度で諦めるほど愚かじゃない」
「勝てることが出来ないというのを理解できない貴様はやはり愚かなんだよ」
トーゼツはシャルチフを睨むと同時にどのように動くか観察し、それに対し自分はどのように動けば良いのかと思考している。
緊張感が空間を支配する。
だが、その空間を破壊したのは別の者だった。
「会長!この状況は一体……」
それは廊下を歩いて現れたエルフの魔術師。きっと、この学生区の見回りをしている兵士なのだろう。
(ここに来て増援かよ……!)
シャルチフさえどうにかすればまだ何とかなったかもしれないこの状況が、より一層、逃げられない状況になってしまうとは。本当に運が悪い。
「コイツは人族……⁉︎侵入者ですか、離れていてください!」
兵士はシャルチフの前へ出る。実力で言えば兵士よりもシャルチフの方が高いだろう。だが、目上の人であり、メイガス・ユニオン内部において重鎮。守るべき対象だ。
そうしてシャルチフを守るような形でトーゼツへと近づき、その身柄を捉えようとする。
「あぁ、ソイツは侵入者だ。だが何も問題はないよ」
シャルチフはポン、とその兵士の肩に手を置く。その瞬間──
「ああアああァァァァァああァあァァァァァァァ!!!!」
兵士には突然、何が起こったのか理解できなかった。
体全身に強い衝撃が駆け抜け、痛みが侵食してくる。
数秒の間はその謎の衝撃に耐えていたが、訓練された兵士でも耐えきれないほどの異常なほどの衝撃だったのだろう。バタリ、と倒れて意識を失ってしまう。
「ふむ、この者にはあとで記憶処理を行わなければな」
シャルチフは倒れた兵士が邪魔にならないように雑に蹴って廊下の端へと移動させる。
「おいおい、仲間じゃないのか?」
トーゼツは目の前で起こった理解出来ない行動に思わず質問する。
「仲間だよ。だが盗み聞きしていたのなら、分かるだろう?まだ我々は冒険者ギルド連合とは戦争したくはない。侵入者とは言え、捕虜にした場合、よりギルド連合との関係に波を立ててしまう。ゆえに、お前は私の権力を持って、しっかり逃がしてやるわ。もちろん、拷問やら自白剤やら飲ませて冒険者ギルド連合情報を吐き出させたうえで、しっかり記憶処理して帰してやるのだがな」
「はッ!笑わせるなよ。アンタの力なんて借りなくても、一人で無事に逃げてやるよ」
トーゼツは剣を構え、はぁー、とゆっくり酸素を吐き出す。
意識を切り替え、その眼は真っすぐシャルチフを見ている。
「まだ諦めないその心、人族にしては良い心構えだ。だが、その往生際の悪い点はやはり愚か者と言えるな」
シャルチフも再び拳に炎を纏う。




