隠された真実 12
トーゼツは何が起こったのか、わからず混乱している最中、書庫から出てくる一つの影。
「避けたか……いいや、運が良かったのかな?」
老人は体を巡っている魔力を熱エネルギーに変換し、空気を燃焼させていた。
「ったく。気づいていないと思っていたか。愚か者め」
「バレバレだったのか……」
トーゼツは指輪の力で空間に穴を開けると一本の剣を取り出す。
「ふむ、この私、ツーヴェル・シャルチフと戦うというのか?」
このジジイがシャルチフ会長だったのか。
しかもその実力、会長という立場に負けないほどの強さだ。
だが、化け物レベルじゃあない。
(姉貴ぐらいの強さだったらともかく、四大聖レベルでもないな。だったら──)
トーゼツは剣に魔力を纏わせ、いくつもの術の詠唱を開始する。
「中級魔術〈炎纏〉!上級剣術〈瞬時断絶〉!」
二つの術を掛け合わせたその一撃は、シャルチフの胴体に見事ぶち当たる。
しかし──
「ッぁ!!」
トーゼツは強い衝撃を受ける。
剣を中心に纏っていた炎を掻き消し、激しい炎がトーゼツの体を襲い、皮膚を焦がし、肉を焼き尽くす。
咄嗟に魔力で肉体を守ろうとするが、それでも熱を完全に防ぐことは出来なかった。
「なかなかの威力だったが、所詮はあの程度か」
トーゼツの一撃は確実に直撃していたはず。
一体、どうやって……?
トーゼツは熱に踠きながら、シャルチフを見る。どうやらシャルチフは防御魔術を使ったようだ。
彼の目の前にはいつのまにか透明な壁型のバリアが展開されていた。しかし、トーゼツの一撃も凄まじいものだったようで、バリアには大きく引き裂かれた跡があった。要するに、バリアでトーゼツの一撃を受け止める事は出来なかった。しかし、威力は半減され、シャルチフの肉体に到達した時には魔力で身を守る程度で充分だったということだ。
「はぁ…はぁ……!」
なんとか炎に耐え抜き、呼吸で冷静な思考を保つ。
「ふむ、私の炎に耐えるのか。手加減はしたつもりだったが……」
手加減していてこの火力か。
まさかカウンターされるとは思っていなかった。まさに油断していたと認めざるを得ない。だが、油断していなくてもあの一撃を無傷で受け止めるのは不可能だったかもしれない。
それよりも──
「バリアも炎も中級レベルの術だな。だが発動の速度にタイミングが完璧……」
四大聖とは違う。圧倒的な魔力量でもなく、異常な火力でもない。経験や訓練から得たまさに生まれ持った才能ではなく、肉体に刻んだ実力。
それはまさに
(俺と俺と同じタイプの戦闘スタイル!)
職を持たず、自力で這い上がってきたトーゼツと同じ戦闘スタイルだ。
まぁ、トーゼツは剣に槍、魔術と多彩であるのに対し、シャルチフは魔術一強という違いはあるのだが。




