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隠された真実 8

 ミトラが廊下へと飛び出して数分後……


 いいや、一分も経ってないかもしれない。


 実験・魔術記録保管室内に倒れるエルフの男。


 あれほど深い傷を負って、床にはそこには一滴の血も落ちていなかった。また、一部飛び出ていた内臓はまるで生きているかのようにずるり、ずるりと自分から傷口から体内へと戻っていく。


 そして、内臓が全て収まるとその深い傷口も、まるでチャックを閉めるかのように閉じていく。


 死んだ……いや、正確に言えばまだ死んではいなかった。もう手遅れと言えるほどの傷を負って意識を失っていたそのエルフの男はその再び意識を蘇らせる。


 「あァ、痛ェなァ。どうやら死んじまったのか。ったく、あの侵入者、只者じゃねェなァ」


 胴体を起こし、自分の体を確認させる。


 さすがに服は戻ることはないが、その筋肉、血管、内臓全てが元通りだ。


 それは魔術ではない。それどころか、この世に存在する技術、力とは思えない。


 だが、男は自分の身に起こった事についてなんとも思ってないようだ。


 「ぺッ!まだ喉と鼻の中に血が残ってんなァ。気管内の血が固まって呼吸困難、それでまた死ぬかもしれねェのが笑えねェ」


 そうして何度も唾液と一緒に血を吐き、鼻水と一緒に中に残った血を出す。


 ようやく呼吸しやすくなって、大きく息を吸う。脳に酸素が回り始めたことで鈍くなった思考が元通りになる。


 「ったく。さて、ここからどうするか」


 あの女、きっと剣聖だ。しかも俺の腕を斬った時、術を使っていた。上級……いいや、絶大剣術の域だったかもしれない。それを無詠唱で。


 剣聖の中でもトップクラス。メイガス・ユニオン内でもあの女に戦える……いいや、善戦出来る奴を含めても十人といないかもしれない。


 他の奴らと違い、俺はエルフ至上主義者ではない。だが、エルフが他種族と同等だとは思っていない。だからこそ、あの人族の女にとても興味をそそられる。


 「くッ、ははははははははッ!気に入った。アイツを捕まえて、おもちゃにしてやる!!そのうえ、俺がもっと権力を手に入れるための道具としても利用する!そのためにも、上に報告するのは俺が生け捕りにしたあとだ。それで誰にも見つかるなよォ!」


 男は口角を上げ、嗤いながらその部屋から出ていく。


 部屋から逃げた侵入者、剣聖ミトラ・アルファインを自分のモノにするために。

 

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