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隠された真実 7

 ミトラは今がチャンスだ、と考える。


 今、エルフの男は隠れているミトラに気づいていない。背中がガラ空きだ。


 立ち去るまで我慢するという選択もある。しかし、立ち去れば男はきっと侵入者であるミトラの事を報告してしまうだろう。そうれなれば動きづらくなる。


 ならば、ここで倒すしかあるまい。


 殺す、とまではいかなくても少しの間眠ってもらうとしよう。


 ゆっくり、ゆっくりとミトラが息を殺して男の背後へと回る。


 腰にある剣を手に持つ。鞘を抜くこともなく。


 (このまま……やってやる!!)


 魔力を送り、勢いよく男の頭にめがけて鞘入りの剣を強く振り下ろす。


 だが──


 「馬鹿がよォ!!!」


 男は両手に魔力を纏い、その剣をはじく。


 「ッ!!」


 気づかれているとわかっていなかったミトラは、まさかはじかれるとは思っておらず、予想外の事が起こってしまった彼女は思考が鈍り、態勢を崩す。


 そこに心臓の近い胸部、喉と人間の急所にその魔力を纏った手で打撃を入れる。


 しかし、ミトラも戦士の中では上位層の存在。


 相手の動きを見て、体に流れる魔力を攻撃されるであろう位置を予測、素早く移動させて防御する。そして、無事に成功したようで、喉も胸部も傷一つなかった。


 だが、その打撃の威力は相殺出来ても衝撃だけは完全に受け止めることが出来ず、崩れた態勢のまま後方へと飛ばされる。


 後ろにあった棚にドンッ!と強く背中を打ってしまい、「くッ!」と痛そうな声が漏れる。


 「へェ……あの攻撃を…あの態勢から……良いねェ」


 男は口角をあげ、笑う。


 「お前ほどの侵入者を捕まえて上に報告すれば、俺も上層部の仲間入り確定だろうなァ」


 もしかしたら……なんて未来を頭の中で想像し始めるのだが


 「残念だけど、そんな未来は来ないよ」


 ミトラは剣を振り上げる。


 「ァ?」


 男は急に体が軽くなった感覚に陥る。


 いいや、本当に軽くなった?


 あの…宙を待っているあの腕は誰の……


 というか、いつのまに鞘から抜いて


 「あまり殺したくはなかったけど、君は手加減できる相手じゃないね!!」


 そう言って、今度は胴体に深い一撃を入れる。


 「ぁ……ぁ…」


 か細い声を上げながら、男は立ち続ける。ふらり、と力の入らないその足で無理やり立ち続ける。


 戦わないと。


 攻撃しないと。


 そのように思考する。だが、立ってることだけしか出来ない。


 深い傷口から何かが飛び出ている。


 内臓……なのか?


 あぁ、これは──


 「油断、したな」


 ばたり、と男はとうとう倒れてしまう。


 「黒いローブの奴ら関連の情報は手に入らなかったし、それ以上にヤバい情報を知ってしまったし、一人殺してしまったな。これは……非常にまずいな」


 これは一旦、退却するしかない。


 そのように判断したミトラはドア付近で気絶している学生を抱え、廊下へと出る。

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