隠された真実 5
トーゼツはしばらく考え、次の取引内容を述べる。
「黒いローブの集団とメイガス・ユニオンの関連性が分かる資料、記録の保管されている場所を教えろ。俺はその保管場所まで自力で向かい、回収。それでお前は信頼を得る、俺は同盟を結ぶに値する実力を持っている事を示す。悪くないだろう?」
「そうですね……」
チャミュエルもトーゼツとの取引内容で深く思案し始める。
このような取引、特に今回のように即席で考えた取引内容に条件では穴がある可能性がある。提案側だけが得するような、穴が。
だからこそチャミュエルはしばらく考え、そして答えを出す。
「良いでしょう、取引成立です」
そう言うとトーゼツに近づき、手に持っていたファイルを手渡す。
「これが十八日前のファイルです」
そうして、その場でペラペラと読み、確認し始める。
読み始めるがそのファイルに保管されている資料というのもおかしなモノはない。。学生区の魔術学の記述式試験の結果。魔術師の合同訓練に関するモノ。そして──
「これは……!!」
トーゼツはとうとう見つける。
何もおかしくはない資料同士の間に挟まれた一枚の紙。ほかの資料ではタイプライターなどで綺麗に書かれているモノが多かった。もちろん手書きの文字もあったのだが、それは書き忘れた部分に書き間違えた個所を手書きで修正したりなどであった。
しかし、それは全て手書き。
明らかに公式資料に混じって存在する異質な資料。
誰の筆跡なのか、分からない。しかし、目の前にいるチャミュエルよりも権力と信頼を持った人物が書いたのであることだけが予測出来る。
そんな資料に書かれている内容は──
例の奴らが要求してきたモノを回収出来た。これで冒険者連合……いや、調和神アフラを出し抜く事が出来るという。我々エルフよりも下等種族と協力関係を結んでいるこの状況は気にくわないのだが……まぁ、良い。利用出来るだけ利用してさっさと捻り潰せば良い。
しかし、アイギパーンめ。しくじりやがって。これだから人族の傭兵を雇うのは嫌だったんだ。仕方ないと言えば、仕方ない事ではあったのだが。今更そんな話をしてもしょうがない。
今はアイツらの計画実行を待つまで。
そうすれば──
そこで資料は終わっていた。
「『奴ら』だとか『アイツら』と言われているのがきっと黒いローブの集団だろうな。この資料を読む限りメイガス・ユニオン傘下の組織じゃないのか。同盟関係……それも組織同士ではなく、個人と組織の関係にも見えるな」
これだけじゃあまだ分からない所だらけ。ハッキリ言える事はない。
しかし、重要な資料であるのは確か。
トーゼツは指輪の力で空間に穴を開けるとそこにファイルを放り込む。
「面白いファイルだったけど、まだ信頼は出来ないな。この部屋にあるファイルにまだ奴らの情報が載ってるモノはあるのか?」
「そうですね。では、それらを合わせて取引通り、ほかに情報が手に入りそうな場所を教えましょう」
そうして、トーゼツはチャミュエルから情報を聞き出すのであった。




