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隠された目的 3

 礼儀正しくチャミュエル・ローリィと名乗ったその女エルフは、何処からともなく一枚のファイルを取り出しトーゼツに見せつける。


 「これがアナタの探している十八日前のファイルです」


 「……」


 トーゼツは警戒を緩めない。


 確かに彼女の言っていた通り、殺意や戦意などは見られない。こちらをすぐさま攻撃するような事はないようだ。しかし、敵組織のエルフをすぐさま信用するほど馬鹿じゃない。


 それに、ローリィもまた目的があって自分に接近してきたはず。


 「チャミュエル・ローリィ…お前は──」


 「エルと呼んでくれ大丈夫ですよ。すぐに警戒を解くとは思っていませんが、もう少し柔らかく対応して頂ければ私もやりやすいのですが」


 フルネームでもなく、ファミリーネームでもなく、ファーストネーム……しかも愛称で呼ばせようとすることで親しい仲へと持っていこうとしているからなのだろう。


 親しい関係になれば、警戒心は下がる。逆にいえば、油断が生まれて隙が出来る。


 それを理解したうえで、トーゼツは続ける。


 「……チャミュエル、お前の目的は何だ?さっさと捕まえてしまって上に報告すれば良い」


 「そうですね、組織の一員としてみればそれが当たり前。しかし、組織も一枚岩ではない。私は組織的な目的ではなく、あくまで個人の目的でアナタに接触したのですよ」


 「個人的な目的?」


 「そしてそれはアナタの目的とも一致している」


 全く話が見えてこない。


 敵対組織の一員と目的が一致している?


 そう言われても分かるはずがない。


 「遠回しに説明するな。説明は要らん、とりあえず求めているモノだけハッキリさせて貰おう」


 「せっかちですね……でも、良いでしょう。簡潔に言います」


 トーゼツは彼女の口から出た言葉によって、驚くことになる。


 それは──


 「黒いローブの集団、その正体と彼らの目的の解明です」


 「はっ!?」


 コイツは……何を言っているんだ?


 「黒いローブの奴らとお前らは仲間なんだろう?同盟関係なのか、奴らがメイガス・ユニオン傘下の集団かは知らないが……ともかく。行動を共にしていた事はハッキリしているんだ」


 「そうですね。ではもう少し私の目的について補足するとします。アナタの言う通り確かに、メイガス・ユニオンと黒いローブの集団は繋がりがあります。それはあくまで一部の者たちだけが知る事実。自分で言うのもなんですが、私はメイガス・ユニオン内では最も強い戦士と言われており、その結果も残してきました。そのため、組織内ではかなり多くの権限を与えられています。その私でさえ極秘情報とされているのが彼らなのです」


 実際にチャミュエルと戦ったわけでないが、やはり彼女から感じ取れる力は四大聖レベル。冒険者連合基準の話になるが、四大聖レベルの戦士は調和神アフラから直接任務を与えられたり、逆にギルドを経由しなくても他の冒険者に部下として任務を与えることが出来る権限を持っていたりする。


 それほど四大聖レベルの戦士は期待されているし、注目も浴びるし、権力を手に入れられる。


 それはきっと、メイガス・ユニオンでも変わらないはず。


 なのにチャミュエルは黒いローブの集団について知ることが出来ない。


 その事からトーゼツの中でより彼らの実態が不透明で掴めなくなってしまうのであった。

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