隠された目的 2
ゆっくりとドアを閉めると、真っ暗な部屋を照らすために魔術で持っていた杖の先に光を発生させる。
「誰か入って来た時のためにお前はドア付近で待機してろ。もし、逃げ出そうものなら──」
トーゼツは魔法陣を展開すると、その魔法陣を白衣を着た学生に何かしらの術をかける。
「記憶改竄して、お前の記憶の中をぐっちゃぐちゃにして一生、元の日常に戻れなくしてやるからな」
もちろん、そんな事するつもりはない。記憶改竄自体は嘘ではないが、前後の記憶を吹っ飛ばす程度にするつもりだ。だが、ここまで脅さないと逃げてしまう可能性がある。
トーゼツとそても解放してあげたいが、彼にはまだここから立ち去るときに利用させて貰いたい。
少年は怯えた顔で、しかし抵抗することなくコクリ、とただ頷く。
そうしてトーゼツは部屋の奥へとゆっくり進んでいく。
(しっかし多いな)
適当に棚からファイルを取り出し、内容を見てみる。
(日付は昨日……か。内容としてはそれぞれの部署にどのように資金を分配するか、と言った内容だな。こっちは魔術師の任務報告書か……日付は一緒の昨日…)
さらにトーゼツはその隣にあったファイルに手を伸ばし、読んでみる。
日付は一昨日になっている。どうやら全ての書類はファイルで日付ごとによって保存されているようだ。であれならば──
(任務の報告書があった。ということはもしかしたら神代の遺物奪取関連の話も任務の報告書として記録している可能性がある)
そして、その計画は確実に黒いローブの奴らと繋がりのある計画だ。
神代の遺物奪取事件は今から二週間ほど前の出来事。
(ここから二週間前のファイルからその記録した書類を見つければ!)
そうしてファイルを開けては、日付を確認し、そうして過去を遡っていくトーゼツ。そして──
「ん?十八日前のファイルがない……?」
おかしい。
十七日前と十九日前のファイルはある。確認していたが、それまで毎日、しっかり書類が保管されていた。なのに、十八日前のファイルだけない。
となると考えられる事は一つ。
「「十八日前のファイルだけ意識的に隠している」」
トーゼツの言葉に重なる一つの声。
「!?」
トーゼツはすぐさま戦闘体制に入る。光っている杖を構え、すぐに魔法陣を展開できるように構える。
「大丈夫、敵対するつもりはありません」
声の方向はより部屋の奥、暗い方からだった。
近づいてくる足音。
(この雰囲気、威圧感……感じる魔力量……四大聖レベルの戦士!!)
この耐えられないほどの緊張感にトーゼツはごくり、と固唾を飲み込む。
そして、ようやく光で見える範囲までその相手はこちらへと近づく。
そこに居たのは造り物のように透き通った肌に、真っ白な無垢を表した綺麗な髪。そして両手の指全てに何かしら術が込められているのであろう指輪を嵌めている女であった。
「私はチャミュエル・ローリィと申します。以後、お見知り置きを」




