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侵入 4

 エルフの少年二人はおとなしく魔術によって拘束される。


 きっと姿を見られたくないのだろう。そのまま背後から両手、両足を縛られる。一応、手足に魔力を入れてみるのだが、案の定、簡単に拘束がほどけない。感覚的にこれはきっと中級以上……場合によっては上級レベルの魔術なのかもしれない。


 そのまま今度は布を頭にかぶせられ、後ろからずるずると引っ張られていく。


 「ここなら誰か入ってきても死角になって見えないだろ?」


 布越しから聞こえてくるのは、男の声。


 男と女の二人組のようだ。


 「さて、布越しから質問させて貰うけど君たちはここの研究者?」


 「……い、いいや、僕たちは…学生です」


 白衣の少年が恐る恐る、答える。


 「学生?」


 女の方から疑問の声が生まれる。


 「メイガス・ユニオンが表面上、魔術学を研究、発明、技術向上を目指す機関で若者の育成にも力を入れているとアナ―……いや、彼女から聞いている」


 誰かの名前を男の口から出そうになっていたが、咄嗟に『彼女』と言い換える。


 「なるほどね。だけど、なんで実験場に学生なんかが居るんだ?」


 「お俺たちは先生……よ、より詳しく言うならここの生命実験室の研究者で……魔術師育成所に、教授を…務めている人に試験管を、持って行ってくれと頼まれていたんだ」


 杖を背負っている少年がそのように答えてくれる。


 その言葉は震えており、自分たちはどうなってしまうんだという恐怖の声であった。


 「そんなに怯えなくて良い。俺たちはお前らに危害を与えたいわけじゃない。最後までおとなしくしてくれれば、最後に魔術で記憶改竄して終わり。君たちはいつもの日常に戻れる」


 男の方がそのように説明してくれる。


 しかし、後ろから刃物で脅し、このように拘束魔術をかけるような奴らを信頼は出来ない。


 「信用はしない感じか。まぁ、良いさ。とりあえず、……そうだな、そこの白衣を着た君に一旦その布袋を外す。今から紙とペンを渡すからこの建物、メイガス・ユニオン本部内の地図を手書きで書いてくれ。分かる範囲で問題ないからな。あと後ろに振り向いた瞬間、いつもの日常に戻れないと思え」


 そんな脅しを言われてはやはり、信頼できないじゃないか!!


 だからと言って相手の要求を拒否すれば自分の命がどうなるか、分からない。


 白衣の少年は言われた通り、布袋を取り外されたのちに目の前あった紙とペンで覚えている限りのメイガス・ユニオン本部内部の詳細を描き上げていく。


 「お……終わりました」


 そう言うと顔を見られないようにすかさずまた布袋をかぶす。

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