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侵入 2

 トーゼツは手のひらに乗せたキューソに紙が巻きつけられていることに気づくと、それをキューソから解いて広げる。そこには二つの魔法陣と、トーゼツとミトラに向けて書かれたメッセージの書かれた手紙であった。


 トーゼツにとって、それはとても見慣れた文字であり、すぐにアナーヒターの描いた手紙だと察する。


 「なるほどな。どうやら結界は『鼓動の速度』と『魔力の有無』らしいな。アナーヒターは過保護だな。ちゃんと対処するための魔法陣も掲載してる」


 結界魔術の解析は、計画当初からアナーヒターに任されていたところではあるが、『解析』までがアナーヒターの仕事であった。結界超えの方法はトーゼツたちの方に委ねられていた。


 しかし、結界を超えるための魔術もアナーヒターは用意してくれた。せっかくだ、この魔法陣を活用しないわけにはいかない。


 二つとも上級魔術だが問題ない。すぐさまトーゼツとミトラは手紙を眺めながら魔力で空中に魔法陣を展開、魔術を発動する。


 「よし、これで準備オッケーだな。キューソ、お前はどうする?」


 そのトーゼツの言葉に「ちゅー!」と元気に鳴きながらトーゼツの体を駆け巡ると、その勢いで素早くズボンのポケットに入り込む。


 「この危険な任務にキューソを連れていくなんて危なくないか?アナーヒターの元に帰させた方が良いような気がするんだけど……」


 「キューソがついてくるって言ってるんだからしょうがないじゃない。それにキューソも頼りになる立派な仲間さ。そうだろ?」


 ポケットから頭を出し、「ちゅーちゅー!」と返事する。


 「まっ、それなら良いんだけど」


 そうして二人と一匹は一時的に心臓の動きを止め、体内から漏れ出る微量な魔力をも塞き止めながゆっくり、慎重に結界を超えていく。


 数秒後、結界を完全に超えた所でふたりは「っはぁ~~!」と安堵の溜息をする。


 アナーヒターを信頼していないわけではない。しかし、少しでも魔術に穴があればメイガス・ユニオンに侵入は不可能になる。いいや、それどころか、捕まって永遠に外の景色を見れなくなってしまうかもしれない。


 それに、この心臓を止める魔術というのはあまり気分の良いものではない。


 心臓がすぐに止まったところですぐさま体中を巡る血液が止まるわけじゃないのは分かっているのだが、それでも、もしもの事を考えると怖くて仕方ない。


 何も起こらず、相手にバレることなく通れたことに少なからず歓喜するのも分からなくはない。


 「「良かった~~!」」


 そのトーゼツの言葉にミトラは「まだまだ安心は出来ないよ」と冷静に言い放つ。


 「私たちの任務はここからだからね」


 「もちろん、出口までもうすぐだろ?」


 「ええ、アナーヒターが昔、まだメイガス・ユニオンに加入していた頃の記憶をもとに用意してくれたこの地図によるともうすぐ実験部署のマンホールが繋がってるらしいからね、気を抜かず、より一層気を付けていくわよ」


 「分かってるよ」


 そうしてどんどん暗い下水の中を進んでいく。

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