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エルフの国 7

 シャルチフは大きく、高級そうな机の引き出しから取り出したのは一枚の紙であった。


 その紙には人の字で綺麗に書かれた文章に、魔法陣一つが載っていた。


 「先日、貴様ら冒険者連合本部から送られた資料だ。内容としては、神都に侵入し、調和神アフラがプライベートに所蔵している神代の遺物(アーティファクト)を奪取した疑惑があるというモノであった。そして、魔法陣には尋問された声が記録されていた」


 そうしてシャルチフは魔法陣に魔力を送り込む。すると、魔法陣が機械の歯車のようにぐるぐると回り始め、そこに記録された音声が流れ始める。


 『お前たちは何処の所属で、誰に命令されたんだ?』


 その声はの主はシャルチフには分からなかったが、エルドたちにはミトラの声であるというのが一発で認識することができた。


 『……べスを通して聞いた話だから…俺はそれが本当の話なのか、知らないんだが……』


 ミトラの質問に答えるのはアケグチ・トータであった。


 しどろもどろな感じがするが、それは彼に無理やり言わせているからだろう。


 せっかく台本を準備して言わせているのだから、よりシャルチフを騙すために迫真の演技をして欲しかったのだが、アナトが物凄く高圧的な態度で尋問したためか。その声はとても怯えてしまっている。


 まぁ、その感じも少し味があって良いのだが。


 『もごもご喋るな。知ってるならさっさと吐け』


 『……どうやらメイガス・ユニオンからの依頼という事らしい』


 そこで音声はぷっつりと停止する。


 「以上が送られてきた音声だ。そして君たちはこの件について言及もとい更なる決定的な証拠を求めてやってきた言わば査察団である、と」


 「まっ、概ねその通りだ。この証言が嘘か本当か。またアンタらが認めるのか、否定するのか。それは分からないが、今、この証言だけが頼りだ。そして我々、冒険者本部はそれを無視するわけにはいかない。と言っても今回、査察まではいかないだろうな。たった三人で査察した所で新たな証拠が出るとは思えん。まっ、今回の話がどう転がるかによっては後日、改めて査察のプロが来るかもな。しかも数百人規模の、な」


 数百人という大規模でやってくるのはさすがに冗談だろう……そう思うのだがアナトの表情は至って真面目なモノであった。


 アナトはさらに話を続けていく。


 「さて、一応聞いておくとするかな。この尋問による証言をシャルチフ氏は認めるのかな?」


 「そうさな……私は知らない、と言っておこうか。その証言は嘘だろう。そもそも証言している男が誰なのか知らんし、興味も無い」


 その返答は予測できていた事だ。だが、その次の言葉は予想外のモノであった。


 「だが、メイガス・ユニオンがやったかどうか。という話になれば別だな」


 ……一瞬、思考が止まる。


 「というと?」


 アナトはさらに質問で返す。


 「この組織はそれなりに大きい。だからこそ、私の把握していない場所で何者かがやったことは否定出来ないということだ」


 そう来たか。


 事実を曖昧にしたが、決して自分は悪くないという話に持っていくとは。


 「こちらでも情報を集めてみるとしよう。査察も自由に行ってくれて構わない。とりあえず、今日は休みたまえ。長い旅路で疲れているだろう?君たちは三日間、この街に滞在する予定なのは送られてきた書類で知っている。またこの話は後日、ということでな」


 そうして、三人は会長部屋を去るのであった。

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