エルフの国 2
それは数日前……。
それは調和神アフラのいる、青く澄み渡る空間が横に広がり、しかし天井と床は真っ黒な闇で構成されているその部屋。そこではトーゼツ、アナーヒター、アナト、ミトラ、エルドの計五人が招集されていた。
「黒いローブの集団の情報を掴むことは出来たけど……どうするつもりなの?」
アナトはそのように質問をする。
メイガス・ユニオンとの正面から戦う事はしない。同じ目標を見る仲間であり、良いライバル。どんなに敵対しようとも、戦争に繋がるような真似はしたくない。それが調和神アフラのスタンスのはずだ。
しかし、黒いローブの集団は何を考えているのか不明のうえ、厄災の力を利用している。場合によっては人類滅亡の未来まであるかもしれない。
そんな黒いローブの集団とメイガス・ユニオンが何かしらの関係を持つのであれば……話は変わってくるはずだ。避けていた戦争を始め、組織を破壊しないといけないだろう。
調和神アフラはしばらく考え、そしてアナトの質問に答える。
「まだ、何処までの関係なのかまでは分かっていない。あくまで協力関係なのか。同盟を結んでいるのか、はたまたメイガス・ユニオン内部で生まれた集団なのか……。そこをハッキリさせなければならないだろう。そこでアナーヒター、アナトの二人にはメイガス・ユニオンの本部へと潜入して貰いたい」
それを聞いて、アナーヒターは口角を上げ、少し笑う。
「面白いわね、今度はこちらがメイガス・ユニオンに侵入することになるなんてね。まっ、私は処罰の件があるから、『貰いたい』とか言ってるけど私には強制的でしょ?」
そんなアナーヒターの言葉に「そうなりますね」と真面目に返すアフラ。そして、同じく任務をお願いされたミトラも「私も問題ないわ」と言って任務を受けるミトラであった。
「じゃあ、私たちはどうする?今回には出番無しか?」
「心配しなくてもアナト達にも任務を与えますよ。アナトとエルドの二人はアナーヒターとミトラの二人が侵入しやすいように正面から行って貰います。こちらにはメイガス・ユニオンを尋ねるために理由がありますからね」
「……どういう理由で尋ねるつもりなの?」
続けてアナトが質問する。
「侵入された神代の遺物の件で行って貰います。再びトータを尋問し、メイガス・ユニオンの任務であったと言わせることで証拠を作り、それでメイガス・ユニオンにこの件を問いただす形で行って貰います」
「なるほどね、アイギパーンならともかく、自分勝手で依頼主に対する守秘義務もくそもないアイツなら、確かにメイガス・ユニオンの任務だって言ってくれるでしょうね。でもそしたらアナーヒターが潜入じゃなくて、こっちに来て欲しいんだけど」
彼女はセレシア出身であり、メイガス・ユニオンについて詳しい所がある。それに、エルフである彼女が一緒に来ることでメイガス・ユニオンの対応も多少は変わるだろう。
「じゃあ裏の潜入は私一人か?」
潜入任務は単独の方がやりやすい時もあるが、今回は冒険者連合レベルではないとはいえ、かなり大きな組織だ。もう一人仲間が欲しいところだ。
「だったら俺が行こう」
そう言ってくれたのはトーゼツであった。
「俺もここに呼んでるっていうことは俺もどちらかに行かせようと思ってたんだろう?」
「ふふっ、話が早くて助かります。より詳細な任務内容を紙で送ります。それでは、よろしくお願いしますよ」
こうして、今回の任務が決まったのであった。




