尋問 5
アナトは続けてトータに質問をしていく。
「さて、次に訊くのはお前の依頼の話だ。お前らはメイガス・ユニオンから雇われた傭兵だな?」
「……さぁな」
「もう一発、欲しかったか?」
「いやいやいやいや!!本当の事だ!!何処かの組織の依頼だってのは知っていた。だが、誰も受けたがらなかったようで、その事を傭兵仲間から聞いて、じゃあ俺が受けようって話になったんだ。ちなみにその傭兵仲間はべスの事だからな!」
嘘……なのではないのかもしれない。だが、調和神アフラによって既に今回の相手はメイガス・ユニオンが放った兵士であるのは既に分かっている情報だ。
トータが本当の事を言っているかどうかは重要ではないのかもしれない。
「……まぁ、良い。そしたら任務の詳細は?それぐらいは聞かされているだろう?」
「それも、とりあえず暴れろって言うのを聞かされているだけだ。あと、俺がこの任務を受けたのは史上最強、神代の終末者と呼ばれるアンタと戦え──」
「それ以上は黙ろっか?」
またもや顔面を殴られ、ヒートアップしそうになったその気持ちは無理やり抑えられてしまう。
「必要以上の事を話そうとするならまた殴るからな?」
「……分かった」
「じゃあ、一旦情報を整理させて貰うけど、今回の任務依頼を直接受けたのはアイギパーン。さらにそのアイギパーンから誘われて任務を受ける事にした。そしてその内容は神都に侵入して暴れる事。トータ自身は依頼主とは会ってないし、詳細も知らないって事でオッケー?」
「まぁ、大体そんな感じだ」
となると、コイツをこれ以上尋問した所で大した情報を得られるとは思えない。やはり本命はアイギパーンの方だがべス曰く、口は堅く拷問されても耐えれるぐらいには根性があるとのことだ。
「今回は完全にメイガス・ユニオン側の勝利って感じかな」
ミトラは自分で書いた出た情報をまとめた紙を眺めながらつぶやく。
「そうだな。これ以上、この馬鹿に付き合うだけ時間の無駄だろうな。そんじゃあ、ミトラがまとめてくれた情報をアフラ様に手渡して今日は帰るか」
そうして二人は尋問室から出ようとするとき
「待てよ」
トータが二人を呼び止める。
「なんだ?まだ私と戦いたいって言う気は無いだろうな?」
「さすがに一方的に殴られるのはもう嫌だからな。そんな事は言うつもりはない。だが……最後に気になることがあってな」
「気になる事?」
アナトは意識は再びトータへと向けられる。
「俺は何処の組織の命令かも知らないし、仮に俺を雇ったのがメイガス・ユニオンだったとしても恩を売るつもりはないからこそ話すんだがな。べスから任務を聞いた際、アイツの弟子のエルフのガキともう一人、黒いローブでフードを深く被った変な奴がいたんだよ」
「黒いローブ?」
それに二人は強い身の覚えがあった。
「ソイツはデカい死神みてェな鎌を持っててよ。纏う雰囲気というか、気配?そんなモノも異常なほど不気味でな。俺は強い奴と戦うのが好きなのに、ソイツとはどうしても戦う気が起きないというか、触れてはいけないようね感じでよ。俺も傭兵稼業を続けてきて、メイガス・ユニオンの奴らとも何度も関わってきたが、あんなのは初めてだ。もしかしたら、本当の依頼主はメイガス・ユニオンじゃあないのかもな」
その雰囲気を二人も知っていた。そう、厄災の狂気に触れた時だ。そして、巨大な死神のような鎌。
二人はこのとてつもなくデカい情報をすぐさま調和神アフラへと伝えるために走って出ていくのであった。




