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尋問 4

 少し時を戻し、べスとアイギパーンが酒を呑みながら駄弁っている間、別の部屋では──


 「おぉい!!俺をここから出せェ!!」


 そのように叫ぶのは、アイギパーン同様、椅子に縛りつかれていたのは和洋折衷の服装をした男であり、アナトに勝負を挑んだあの男であった。


 部屋の内装もアイギパーンの居た部屋同様に何もない部屋であった。


 無駄に叫び、今にも拘束を無理やり解いて暴れてしまいそうなその時、ガチャリとドアが開いて入って来たのはアナトとミトラの二人であった。


 「おいおい、蘇生してまだ数時間だろ?なんだコイツの馬鹿みたいな元気っぷりは……?」


 今から、こんな奴を尋問しなければならないのか?と嫌な気分になるアナトであった。またミトラもこの騒がしさに耐えきれないようで、とても不愉快な表情であった。


 これならべスに変わってもらってアイギパーンという奴の尋問をした方が良いかもしれない。というか、そっちの方が気分は幾らかマシだろう。


 「おぉ!アナトじゃないか!!もう一回、もう一回()おう!!今度は絶対俺がお前をぶち殺す!!なぁ、だからこの拘束をさっさと解いて──」


 そこに容赦なく顔面に一発、拳をぶちかますアナト。


 基本、捕縛した者への暴力行為は禁止されている。これは冒険者連合内のルールなどではなく、世界各国の取り決め、条約で決まっているモノだ。


 なので拷問ではなく、尋問という形で幽閉して情報を聞き出そうとしている。だが、さすがにこんなに騒がれると尋問どころではない。


 それに、単純に見ていてムカつく。


 「痛ッてェなァ、おい!動けな」


 もう一発入れる。


 「い奴を」


 またまた一発。


 「一方的に」


 まだ喋れるのか、ならもう一発、と。


 「殴る……な、ァ!!!」


 アナトの手加減なしの殴りによって先ほどまでの元気さは半減しており、殺し合おうなんて豪語していたが今ではすっかり意気消沈している。


 これは明らかに捕縛兵への処遇としては条約違反に触れているだろうが、それをミトラは止める気にならなかった。というか、もっとやって欲しかった。


 いくつかの歯は折れ、骨が折れたのか。少し鼻がひん曲がっている。


 「よしよし、まだ喋れるみたいだな」


 ぺちぺちと男の頬を叩き、尋問するのに問題はないぐらいには意識がしっかりしているのを確認するとさっそくアナトは質問を始める。


 「一応、訊いておこう。名前は?」


 こちらも尋問を迅速に行うために出来る限りの事はこちらで調べ上げてはいるため、名前ぐらいは把握している。だが念のためだ。


 「俺はアケグチ・トータ。東方諸国からやってきた傭兵だ。まっ、言わなくてもどうせ、これぐらいは調べがついてるんだろう?」


 出身までは分かっていなかったが、自分から喋ってれるとはありがたい。


 このように相手に何処まで自分の情報が把握されているのか、分からないゆえに必要以上の事を喋り、情報を漏らしてくれることがある。


 ミトラはトータが話してくれた情報を紙で素早く、簡潔にまとめていく。

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