尋問 3
メイガス・ユニオンは本気で冒険者連合を潰そうと思っている、そのようにメイガス・ユニオンと直接関わりのあるアイギパーンは感じていた。
今回の任務はメイガス・ユニオンの上層部から直接言い渡されて受けた任務だった。
アイギパーンが上層部から感じ取れた気配というか……雰囲気と呼べば良いのか。分からないが、とにかく感じたものは明確な敵意であった。ここで冒険者連合を出し抜いて、潰してやるぞというモノであった。
そのため、冒険者連合の方でも明確な敵意があるのかと思いきや、それどころか良いライバル扱いとは……。これじゃあメイガス・ユニオンがムキになった子供で、冒険者連合がその子供を軽くあしらいながらも相手してくれる大人のように見えてしまう。
(これじゃあメイガス・ユニオンは一生、勝てないかもな)
報酬が良かったから受けた依頼だが、こうなると今後のメイガス・ユニオン関連の仕事を受けるかどうかを考え直す方が良いかもしれない。
「まったく……神様は俺たちとは違う視点を持ってんなぁ。だって今回の任務でメイガス・ユニオンが冒険者連合に戦争仕掛けてもおかしくないと思ってたもんな。だが、その感じから行くとメイガス・ユニオンと神々の計画の目標は同じなのかもな」
「へぇ、お前も神々の計画を知っているのか」
神々が時代を人に明け渡そうとしているのは多くの人が知っている事実である。だが、そのために神々が裏で模索し、計画を立てているという事を知っている者は少ない。
それこそ、実際に神と呼ばれる者たちと接触していないと知る事はないだろう。
「まぁな、現在も傭兵としてあちこちで仕事してるんだ。しかも裏社会でだぞ?そこで神の一柱や二柱、遭遇しないわけがないだろ」
「確かにな」
実際、べスも神かもしれないという存在にはいくつか遭遇したことがあった。それに傭兵に限らず、冒険者などの死と隣り合わせの仕事をする者は神秘的なモノに想いを寄せることが多い。
だからこそ、その想いを糧に新たな神が誕生し、我々の前に姿を現す事もあるのかもしれない。
「案外、世の中は人間には理解出来ないことが多いからな。おっと、酒が無くなっちまった。今日はここら辺で終わりにしますか」
そう言うと椅子から立ち上がり、部屋から出ようとする。
「おいおい、尋問しなくて良いのかよ?」
喋るつもりはないが、こんなに仕事をしないべスに思わずツッコむアイギパーン。
「お前はどうやっても喋らないだろ?それが分かってるから、何も訊かないんだよ」
そうしてドアノブに手をかけたその時
「最後にもう一つ、質問させてくれ。俺の弟子のシリウス……あのエルフのガキはどうなった?俺同様、捕まっちまったか?」
「シリウス…ガキ……あぁ、あのリボルバー式拳銃もったあのエルフの女の子か。アイツは俺の部下のやらかしで瓦礫の下に埋まった。はずなんだが、そのあと、瓦礫を退かしても死体は見つからなかった。多分、逃げきってみせたと思うぜ」
そうして、アイギパーンはホッとした表情になり、それを見たべスは今度こそ部屋から出ていくのであった。




