尋問 2
ごくごくと二人は交互にスキットルに入った酒を呑み、アルコールが少し回り始めた所でさらに尋問には関係のない雑談へと話が向かっていく。
「しかし、俺って頭つぶされて死んだ記憶があるんだが、なんで生きてんだ?」
「うちにはエルドっていう化け物じみた術聖が居てな。それで蘇ったんだよ」
「はえー、噂で聞いてはいたが本当に実在したとはな……」
冒険者連合本部に所属している魔術師の中で凄まじいほどの治癒魔術を使いこなし、どんな状態でも人を蘇らせるという異常な術師がいる話は戦いに身を置く人間の中ではかなり有名なモノだ。
だが、その蘇りの回復術をこの身に受けた所で未だにそんな術師がいることに信じられない。なにせ、それはあらゆる傷病を治すという人類の悲願であり、不老不死という多くの者が見る夢が実現してしまう可能性があるという証明であるからだ。
「と言ってもさすがにエルドの回復魔術も万能じゃない。どんな死体でも蘇らせるが、二十四時間以内じゃないと完全に復活は出来ない。仮に二十四時間を超えた死体を蘇らせる事に成功しても何かしらの障害が残ったり、一週間と寿命が持たない短命になるらしい。それに魔力も無限に湧き出るわけじゃない。一日に三十人蘇らせるのが限界だな」
「魔術の可能性を感じるが、やっぱり現代の魔術学ではまだまだって所か」
やはり、死者が復活するという人の倫理観を覆す事は出来ないのかもしれない。
「しかし、今回お前らは本当によく暴れてくれたよ。動員させていた冒険者の数は約百五十人。それに対し、怪我人三十二人に、死者数二十五人だ。昨日、エルドは魔力切れでマジで死人みたいな顔していたよ」
「ははっ、それは良い。今後、傭兵として雇われるときは術聖もキャパオーバーさせちまうほどの男っていう名で売らせてもらうわ」
「もっと良い名あるだろ、センス無ェーな」
尋問する側と尋問される側、まさに敵同士と言えるこの二人はそんなの構わずどんどん酒を入れて部屋に笑いを作っていく。
「そういえば、話はかなり変わるが知っているか?調和神アフラは今回の件はテロリストがやったことにして外部に公表しないとさ」
ここでべスが話の内容をガラリと変えてくる。
「それまたどうして?」
「メイガス・ユニオンと冒険者連合は傍から見れば敵対組織という立ち位置かもしれないが、神目線からすれば別の方法から神代を終わらせようとする人類発展を目指す仲間であり良いライバル。だから無理に敵対する必要はない。それに今回は冒険者本部に対するものではなく、あくまでアフラが『プライベート』で集めていた神代の遺物の奪取。つまり調和神アフラが冒険者連合に依頼をしたという形だ。そう考えれば今回は冒険者連合が任務を失敗して、お前らメイガス・ユニオンの任務が成功した。ただそれだけの話。それにもし完全敵対の態度を見せれば戦争に発展しかねない。だから何も言わないってよ。実際、お前らの目的が神代の遺物だって知っているのは調和神アフラに、アナト、ミトラ、そして俺ぐらいなもんだ」




