メイガス・ユニオン 31
頭がくらくらする。
体全身も熱い。
一体、何が起こったのだろうか。
確か……神都を脱出しようとして外へ出るための門まで行けたけど……急に爆破して──
「ッ!!」
そこで朦朧としていた意識が完全に現実へと引っ張り出される。
「おっと、起きたか?」
そのように声をかけるのはスーツの男、ルーフェルであった。
まだぼやける眼で周囲を観察する。そこは森の中。近くには小川が流れており、心地よい風によって葉がさざめく。時間は夕方なのだろうか。赤く染まってきている。
エルフの少女はむくり、と体を起こす。
「ギリギリ瓦礫の崩落から『パンタレイ』でお前を助ける事が出来て良かったぜ。感謝しろよ」
意識が回復したばっかりだからなのか。まだ情報の整理が出来ていない。
腕には少しばかり火傷の痕が残っている。助けてもらったとはいえ、無傷ではないのはやはりあの爆発の熱気に一瞬でも包まれてしまったからなのだろうか。
そう思い、ルーフェルの方を見ると、彼の髪や服も一部焦げている跡があった。
そうして何があったのか、あの後どうなったのかと整理して数秒後、ハッ何かに気づいたようでルーフェルに尋ねる。
「わた、しの……師匠は!?」
「師匠…ってべスの事か。悪いが奴は救えなかった。冒険者の奴らに捕まっちまった」
それを聞いた瞬間、エルフの少女は自分の持っている武器であるナイフと拳銃、そして残りの弾数を確認すると立ち上がり、何処かへ行こうとする。
「おいおい、どうするつもりだ?」
「もちろん……助け、に…行く」
「馬鹿か!?単独じゃあ無理だ!それに体の負傷も酷いもんだ!肉体的にも精神的にも疲労が溜まっているだろうし、任務は成功した。ここは一旦、退かなきゃダメだ!!」
彼は目当ての神代の遺物が入っているスーツケースを見せつける。
「でも…師匠に一つ……渡した、んじゃ?」
任務は三つの神代の遺物奪取であった。だが、そのうちの一つをアイギパーンに渡していたはずだ。
「いやいや、あれは任務に全く関係のない代物だよ」
「?」
「だって、調和神がプライベートで保有している神具保管庫……今後、そこに入れる機会は二度とないかもしれない。だから俺は適当なモノを自分用にいくつか盗ませてもらったんだよ」
そういって、彼が懐から取り出すのは一つのナイフ。それは異質な魔力であり、一目見て神代の遺物であると理解できる。
「ほれ、お前にも一個やるよ」
そういってナイフをエルフの少女に手渡す。
「さて、これでメイガス・ユニオンの要望通り、まさに理想的な形で依頼は成功させたんだ。それを種に懇願すればアイギパーン救出を手助けしてくれるだろうよ」
確かに、そうかもしれない。
今の自分がたった一人で行ってもどうすることも出来ないだろう。ならば、ルーフェルの言う通りだ。
「分かっ、た。撤退…しよう」
そうして二人はメイガス・ユニオン本部へと向かって歩き始めるのであった。




