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メイガス・ユニオン 30

 これで、エルフの少女を止める者はいなくなった。


 既に門をくぐっている最中。


 ミトラとの距離は充分なほどにかけ離れている。


 邪魔してきたこのアロハシャツの男も倒した。


 これで何も問題はない……はずだった。


 「馬鹿が……引っかかったなァ!!」


 ポットバックは苦痛の表情で、血が止まらない首を抑えながらも体に纏っていた魔力を周辺に撒き散らかすように放出。すると、防壁にまるでイルミネーションかのような赤い光の点があちこちで発生する。


 その光をよく見ると、それは矢であった。


 術が仕込まれた矢が防壁に数百本も刺さっている。


 そして、これは唐突に起こった。


 急に熱気に襲われたかと思えば、ボォンッ!と強い衝撃が奔る。そして防壁にヒビが入るとすぐさま崩れ落ち、門は瓦礫によって埋まっていく。


 「は……?」


 さすがのミトラも何がどう起こっているのか、理解出来なかった……というよりしたくなかった。


 神代の時代から神々が築き上げて、歴史あるこの防壁が……崩壊していく?神が造った歴史的建造物として傷や落書きさえも街の法律で禁じているこの壁が?


 あぁ、瓦礫で周辺の民家や建物も潰れていく。


 もう、ミトラの頭は真っ白であった。


 「ふぅー、これで奴も生き埋めになってることだろう!さて、一件落着!!」


 それに対し、ポットバックはしてやったぜ!という表情でとても満足そうであった。


 「なにやってんだこの馬鹿やろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」


 そこに助走をつけながら、ポットバックの顔面を魔力を乗せた拳で強く押し潰していくのは加勢にやってきたべスであった。首を斬られて出血多量で今にも死ぬかもしれない怪我人に対してやる行為ではないが、その異常さがまさに特異課であることを証明させている。


 「歴史的重要建築物として保護されている防壁に傷をつけるところか、壊すってのは許されるわけ無ェェだろォォがァ!!一体、どういうことつもりだ!!」


 怒号と共に顔面が潰れているポットバックをさらに殴ろうとするべスだったが──


 「痛ってェなァ!何しやがるんだオラァァァァァァァァ!」


 何処からか、取り出してきた矢をべスの頭に刺し、その矢を中心にボォンッ!と大きく爆発をする。


 べスの頭はその爆破に耐えきれず、吹っ飛び、またゼロ距離で立っていたポットバックもまた自分で発動させたその爆発で体が吹っ飛び、死んでしまう。


 ミトラにとってべスは先生にあたる存在だ。だが──


 「……何なんだ、こいつ等」


 さすがにこの謎行動……というかほとんど作戦が終わったこの状況でどうすれば死人が出てしまうのか?と一部始終を見ていた彼女は困惑し続けるのであった。

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