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メイガス・ユニオン 27

 アイギパーンは逃げ切れないと悟ると、立ち止まりすぐさまべスに向けて銃を構える。そして容赦なく撃っていくのだが、それをべスは軽く避ける。


 魔力で弾丸の操作を行う余裕が無かったとは言え、真っすぐ向かってくるその弾丸は人間の視力では捉えきれないもののはずだ。


 「化け物がッ!!」


 スロースターターとは言ったものの、体が動くようになると弾丸さえ見切れるようになるとは。


 接近したべスはアイギパーンの腹部めがけて強い蹴りを入れる。


 「ッ!」


 足の踏ん張りが効かず、べスの蹴りによって後方へと吹っ飛ばされる。そして後ろにあった建物の壁に背中を勢いよく叩きつけられる。


 「どうだ、もう諦めねェか?」


 まるで獲物を追い詰める獣のようにジリジリと間合いを詰めて来るベス。


 そうだな……真正面からやっても逃げ切れないのはもう分かっている。


 だからこそ──


 「お前、自分たちの目的を忘れてないか?」


 「……なに?」


 べスは一瞬、動きを止める。


 アイギパーンがポケットから取り出したモノを視認性したからだ。

 

 それは明らかに異質な魔力を纏った小さな水晶。現代の技術を活用しても不可能なほど綺麗に加工され、磨かれたその魔鉱石の水晶は──


 「神代の遺物(アーティファクト)か!?」


 アイギパーンはレバーを回し、リロードを行うと銃口をその水晶へと向ける。


 「任務とはいえ、自分の命が最優先だからな……お前が近づけばコレを破壊する!」


 「ッ!」


 ベスの歩みが止まる。


 まさか、本当に神代の遺物(アーティファクト)なのか?


 いいや、そんなはずがない。アイギパーンをずっと追いかけ続けていたし、その前から戦い続けていた。アイギパーンの目的は神代の遺物(アーティファクト)奪取ではあるのだろう。だが、調和神アフラの神具保管庫には到達どころか近づけてさえいない。奪取のタイミングはなかった。


 侵入者は四人と聞いている。アナトが倒したという刀の男。それからアイギパーンとその弟子であるエルフの少女。そしてまだ見ていない奴が一人居るのだが仮にソイツが神具保管庫に到達し、奪取成功したと考えよう。


 だが、それを手渡すタイミングも無かったはずだ。路地裏はあらゆる出入口を見張っており、誰かが入っていった姿も見ていない。


 だが、べスの眼に映る水晶はまさに誰が見ても神代の遺物(アーティファクト)だ。


 (元から奴が所持していた私有物か?だとしても、そんなモノずっと隠していられるとは思えねェ。あの異様な気配を戦闘中に気づいてもよさそうなもんだ)


 ならば、やはりあの路地裏の中か。


 「さて、どうする?俺を逃すか、それともここで調和神アフラが回収した世界を変えかねないこの神代の遺物(アーティファクト)が破壊されるのを眺めるだけで終わってしまうのか」


 「………」


 べスは少し考え、しかしすぐに思考を放棄する。

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