メイガス・ユニオン 25
場面は再びアイギパーンの方へと戻る。
弟子であるエルフの少女を連れて逃げ回っていた二人であったが──
「応援が……多す、ぎる!!」
追いかけるミトラとべスが要請したようだ。見回りをしていた冒険者たちが次々と現れて二人の行く先を邪魔して来る。しかし、それをエルフの少女が拳銃で一気に撃ち殺していく。
なんとか逃げきれているが……。
「くそッ、誘導されているな」
明らかに計算された動きを冒険者たちがしている。同じような所をぐるぐると回っている気がする。
ここは逃げ切るよりも、一時的に身を隠して潜む方が良い。
二人はずっと建物の屋根から屋根へと移動していたのを止め、近くにあった適当な路地裏へと入り込むとそこからさらにジグザグに動き、相手を攪乱する。
さらにべスはとっておきのモノを懐から取り出す。
「おらよ、これで立ち往生しとけや」
口でピンを外し、後方へと投げ込んだのは──
「下がれ、爆弾だ!!」
べスが叫び、一緒に動いていた冒険者たちを静止させる。
ボォンッ!と熱気と爆風が広がり、さらに周辺の建物を破壊する。そして建物の瓦礫が追いかけていた者たちの障害へとなるのであった。
瓦礫を登ろうとするが、瓦礫に足を乗せたその瞬間に、ガラガラと崩れていく。この状態では無理やり登って追いかけるのは無理そうだ。
「ちぃッ、一回路地から出るぞ!!」
べス達は諦めて別のルートを探しへと行くのであった。
「よし、一時的とはいえ上手く免れたな」
どんなに魔力で身体能力向上させた所で一度に吸い込める酸素量は変わらない。二人は「はぁ、はぁ」と肩を揺らしながら激しく息切れをしていた。体も熱くなっており、額に流れる汗を拭う。
「ここか、ら……どうするの、師匠?」
「そうだな……数は圧倒的にあっちが上。しかも追っかけている冒険者のほとんどはこの神都で暮らしているはず。そうなると路地の隅々まで神都の内部把握も出来ているだろうな。このまま入り組んだ路地裏を利用した所で逃げ切れるとは考えきれない」
「きっと……防壁付近の、警備も…いるはず」
さて、どうしたものか。
最も思いつくものとしてあるのは、ゴリ押しで行くことだ。
とにかく追いつけないほどのスピードで逃げ、防壁付近の警備も倒して、脱出。不可能ではないが、成功確率は確実に低いだろう。
ほかにも手段があるはずだ。
数を減らす……ダメだ。二人で戦っても良いとこ半分削れるぐらいだろう。そのあとは魔力切れでゲームオーバー。ならば、姿を完全に隠し脱出……これも不可能。どんな魔術、魔具を使ってもアナトがいる。彼女の槍聖であり、弓聖であり、術聖だ。そんな彼女の眼をごまかすことは出来ない。
ならば……相手の意識を逸らす?
「うん、これならいけそうだ」
なんとか可能な手段を見つけたアイギパーンは次のどうすれば良いか、思案し始める。




