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メイガス・ユニオン 24

 また、この異様な気配を感じ取っていたのは目の前で圧倒されていたスーツの男だけではなかった。


 「やはり……彼を本部に迎え入れて正解でしたね」


 それは研磨した黒曜石のように黒く、長方形の姿をした城の中……最後に生き残った一柱。


 調和神アフラであった。


 「ミトラは良い人材を見つけてくれました。彼ならば、トーゼツ、アナトに続いて新たな候補の一人に成りえるでしょう。神々の計画、その中心に置ける者として」


 アフラは口角を上げ、微笑む。


 我々、神々の計画が着実に、そして確実に出来上がっていくのに。



 「どうした、抵抗はしないのか?」


 エルドはより首を絞める右手の力を強める。


 「なッ、舐めるなァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 魔力を両手に纏わせ、自分の首を掴むエルドの腕を強く殴る。


 どんな馬鹿力でも、そのパワーには負けたようだ。ボキッ!と骨が折れる音と共に腕が行ってはいけない方向へと曲がってしまう。


 それにより手の力は弱まり、スーツの男は解放される。


 普通であれば、このまま追撃を入れてエルドを倒すべきなのだろう。


 しかし、スーツの男は慌てて距離を取り、様子を見る。


 「あぁ、腕がやられたな」


 やはり、痛みで悶えることはなく、焦りもない。自分に起こったこの状況を淡々と観察している。そして、魔術を使った仕草はなかったのにも関わらず、腕がいつのまにか治っている。


 さすがに下級、中級魔術レベルの治癒魔術では治せない。しかし、エルド程度の実力ならば上級魔術を無詠唱、魔法陣なしで発動できるとは思えない。


 だが、そんな事よりもスーツの男は別の要素に恐怖を感じていた。


 「…………ッ」


 エルドの表情からは感情が読み取れない。というより感情がそもそもない?


 いいや、違う。


 本来、人間が持たざる感情。理解出来ず、また表現することすら不可能な感情がエルドの中で渦巻いているのだ。


 もう、目の前に居る少年は先ほどの少年ではない。それどころか人間ではなくなってしまっている。


 そう、まさに今の彼は──


 「あ……ァ…」


 だが、突如としてエルドはバタリ、と倒れこんでしまう。それは電源の落ちた機械のようだった。


 そのタイミングで固有技能の力が戻って来たのを感じるスーツの男。


 「……なんだ、ったんだ?」


 なんだかよく分からない。


 結果的に助かったようだが……後味がとてつもなく悪く、未だに体にこびりつく恐怖を払拭することが出来なかった。


 それでもとりあえず、この場から離脱しなければ。


 そうして固有技能を用いて、すぐさま消えていく。



 「やはり、まだ不完全ですか。しかし、運よく今回は引き出す事が出来ましたね」


 アフラは少しがっかりそうにつぶやく。だが、このような結果で終わることも予測していたことだ。


 「ですが、かなりエルドの成長は速い。トーゼツよりも適正は無いようですが、成長していくエルドにトーゼツが影響を受ければ……ふふっ、これならば計画を次の段階に進めても良いでしょう」


 調和神アフラは近いうちに訪れる未来へと夢を膨らませていくのであった。

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