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メイガス・ユニオン 19

 エルフの少女は状況を分析するが、しかし同時にこちらが不利になりつつあるのを自覚し始める。


 ダメージを負い、攻撃も当てられないミトラ。圧倒的技術力で上回っているエルフの少女。しかし、与えるダメージが思ったよりも微力すぎる。


 致命的なダメージを与える一手が打てない以上、こうなると長期戦闘に必ずなる。すると、一気に状況の見方が逆転してしまう。


 魔力量が一般的な戦士と同等の少女は戦闘継続できる時間はせいぜい二十分程度。魔力運用に力を注いで節約したとしても三十分に伸びるかどうか。それに対し、ミトラの魔力量は四大聖に相応しいほど異常な量。少女と比べるのがバカバカしくなるほどだ。


 つまり、どちらが先に倒すかではなく、どちらが先に魔力が尽きるかという持久戦になるということだ。


 そうなると圧倒的に不利なのは──


 (私だ!)


 理解してしまった少女の中から余裕が消えていく。


 さすがにこの事をミトラが気づいていないわけがない。


 (あの子も分かったようね……)


 体に伝わった弾丸の衝撃に苦しみながらもミトラは勝利の確信を得たことで口角が上がり、笑みがこぼれていく。そして剣を握りしめ、自分が勝つための活路……持久戦へと進みだそうとする。


 その時であった。


 「おっ?」


 エルフの少女は何かに気づき、自分の右手首を見る。そこにはミサンガのように括りつけられた紐があり、美しい青で綺麗に光り始める。そして、そこから三回、青く点滅するとその青い光は完全に消えただの紐へと戻ってしまう。


 (三回光っ……た。と、いう…ことは──)


 任務成功、脱出の合図だ!!


 であれば、この戦いは持久戦では無くなった。


 如何にして逃げるか、という逃亡戦へと一瞬にして切り替わった!


 戦が変われば有利な立場も変わる。この場合、魔力ではなく速度で上回っている方……つまり


 (私の……圧倒的…有利!!!!)


 彼女はナイフを懐にしまうと近くの建物の壁を蹴り上げ、まるでパルクールのようにして華麗に建物の屋根へと登る。


 「それじゃ……ばい、ばい!!」


 少女はそのまま身軽な動きで屋根から屋根へと移動していく。


 「待て、何処に行く!上級魔術〈陽纏ようてん〉!」


 周囲の家も壊してしまうが、相手を逃がしてしまうよりかは良い。このまま再び上級剣術〈マジック・ラディエイション〉を組み合わせてエルフの少女を倒す!


 そうして今度は剣術を唱えようとしたその瞬間


 「ッァ!!」


 口から鮮やかな赤く、自分の大事な何かが吹き出る。


 何が……起こった?


 喉が…痛い……。首からも…血が……?


 「油断していたアイツも悪いけど、自分の可愛い弟子でもあるんでな。ここは一撃、入れさせてもらったぜ。そこでしばらく苦しんでおくんだな!」


 そういって、エルフの少女同様に屋根を移動していくのはライフルを持ったカウボーイハットを被った一人の男であった。銃口からは煙が上っており、ついさっき弾を撃ったのが分かる。

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