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メイガス・ユニオン 15

 アナト、ミトラ、べスの三人が激しい戦いを行っている最中──


 「よし、無事についたな」


 同じく神都に侵入したスーツの男であった。


 彼が立っていたのは神都の何処かにある巨大な扉の前。


 「見つけるのに苦労したぜ、何度飛び回ったことか」


 神具保管庫は公表されていない秘密の場所であり、冒険者ギルド連合のトップも何処にあるのか知らない。きっとミトラでさえ知らないだろう。


 だが、もしもあるなら……ということである程度、目星はついていた。


 調和神アフラのいる黒い長方形の建物、その中だ。


 だが、その中に入れるのも調和神アフラに認められた者だけが入ることが出来る。部外者や一般人が許可なしに入ることは不可能。


 「こりゃあ、俺の固有技能が無けりゃあ任務は破綻してたな」


 このスーツの男の固有技能……『パンタレイ』はいわゆる空間移動系の能力だ。


 上下左右、あらゆる方向へと制限なく移動することが出来る。唯一、制限と言えるのはその効果範囲だが、それもスーツの男を中心に半径一キロメートルという莫大な範囲である。さらに連続使用も可能なためにその効果範囲制限も意味が無いようなものだ。また消費する魔力量も大したものではなく、触れている物質も移動可能というオマケ付き。


 応用すれば戦闘にも使うことが出来るこの固有技能。しかし、金銭にしか興味が無く戦いを好まない彼はほとんど運び屋のような仕事しか引き受けない。


 今回の作戦だってかなり危険で断りたい仕事だったが──


 「まっ、これでメイガス・ユニオンには恩も売りつけられるし、俺にとっても旨い話だったわけだ」


 裏社会で生きるスーツの男にとってはいざという時に自分を守ってくれる後ろ盾が欲しいというもの。冒険者ギルド連合や魔術学連合に並びはしないものの、匹敵するメイガス・ユニオンに恩が売れるという絶好のチャンス。


 「しかし、このデカい扉にも結界が展開されてるな。やっぱりアフラ私有の保管庫だからか?だが、俺の『パンタレイ』を使っちまえば……!」


 そうして、全身に魔力を纏ったスーツの男は一瞬にしてその場から消え去り、次の瞬間には彼の視界は真っ白な空間へと変わっていた。


 天井も床も白く、空間は果てしなく続いている。


 そんな不思議で真っ白な空間には棚が設置されており、色んな道具が飾られていた。


 剣や刀、槍や弓矢……盾と防具。さらにナイフに料理用の包丁と言った武具とは呼べないものもある。しかしここにある全てが神代の遺物(アーティファクト)現代の魔術学では解明できない技術と術が仕込まれた神々の道具。


 「さて、ここからはお目当てのモノを見つける作業といきますか」


 スーツの男はポケットから一枚の紙を取り出す。


 そこにはメイガス・ユニオンの求めているモノの特徴や見た目が書かれていた。男はそれを頼りにどんどん真っ白な空間、その奥へと入っていくのであった。

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