アーティファクト 8
この手に持った剣に起こった現象にミトラは驚いて思考が追いつかず、声も出なかった。頭の中を整理し終え、口を開けたのはそれが起こって数秒後の事であった。
「これは…魔具…なのか?しかし、魔術が付与されているだけではこんなふうには決してならないぞ!アーティファクトでさえも見たことはない。これは一体、何なんだ?」
ヘイフォンは少し考える。それは、伝えて良いのだろうか、ということではない。どのようにこの事象を説明すればわかりやすいだろうか、という思考であった。
「ふむ…そうですね。私自身、その剣の仕組みについては理解出来ません。ただ一つ、言えることがあります」
それは、至って真面目な表情。しかし、冗談でも言っているのかと疑いたくなる言葉から彼の口から飛び出す。
「異世界の武具です」
異世界の…武具?
いやいや、どう考えようとも、納得いくはずもない。だが、分からない点はない。問題は、ヘイフォンの発言が本当かどうか、である。
「これを何処で手に入れた?なぜ異世界の武器って分かる?」
「それを偶然ですよ。アーティファクトを見つけるために、古代の資料、文献を使って遺跡を探している中、たまたま何者かが隠れて研究していた場所を見つけましてね。どうやら、六百年ほど昔にいた術聖が隠居時代に使っていたとされる場所だったんですよ。それで、彼の残した実験記録を見ると、異世界の研究をしていたようで……」
「なるほど、それでコイツが転がっていたと」
それは、それで勝手に持ってきてはダメなような気がするのだが。
とうの昔の話で、その術聖だって死んでいるだろう。しかも、かつての術聖の研究施設、しかも異世界を対象とした研究なんて、世紀の大発見と言っても良いだろう。しかし、そんな場所が見つかったなんて話、聞いたこともない。
つまり彼は、そんな人類にとって重要な場所で、勝手に物を漁り、国や冒険者ギルドにも報告を入れず、ただ売れそうな他人の遺物を持ってきたということではないか。
「……まぁ、良いよ。それで直接、誰かを騙したとか、傷つけたとか、そんな直接的に他人を困らせるような事をしてないから、何も言わないけど」
「それはありがとうございます。それで?どうなさいますか?」
そのように問われるが、ミトラの中では既に決まっていた。
「買うわけがないだろ」
異世界の品物、それはかなり気になる。だが、どんな力を持っているのか、不明だ。もし、使っている最中、爆発なんかでもしたら、たまったもんじゃない。それに、他人の遺品であるのも事実だ。ゆえに、すぐに買わないとミトラは判断したのだ。
(やっぱり、鑑定眼と技術はあるけど、商人は商人か)
人を商売相手としか見ておらず、物も金になるかどうかしか考えていない。
「もう失礼するよ」
そう言って、ミトラもテントの中を通って来た道を引き返していくのであった。
「ふぅむ、まぁ仕方ないか。しかし、あれが剣聖か……。思っていたよりも弱かったな。あれが厄災に打ち勝てるとは思えんな。まぁ、トーゼツ様がおられれば—」
と二人が去ったあと、いろいろと画策するヘイフォンであった。




