メイガス・ユニオン 14
べスは咄嗟に下級防御魔術を発動し、壁型のバリアを展開する。のだが、パリンッ!とガラスが割れるようにバリアは破壊され、いくつもの弾丸の欠片が肉に入り込み、いくつかが内臓へと到達する。
「ちぃッ!」
しかし、痛みで怯むことなくべスは剣を握りしめてアイギパーンへと勢いよく刃を振り下ろす。のだが、さすがにダメージを負って動きが鈍くなったか。簡単にその一撃は避けられてしまう。
この状態のべスにであれば、このまま追撃を入れることも可能だろう。にも関わらずアイギパーンはバックステップで後方へ下がり距離を取り始める。移動している間にもレバーを引いてリロードをして次の攻撃の準備を行っていた。
「一応、距離を取ったか」
「まぁな、お前の怖いのはタフで馬鹿力がある所だ。それに対人戦においてお前は異常な強さを持っている。それにお前は本気出せばアナトにさえも超えられる、そう俺は思ってるからな」
「無駄に高い評価だな」
「事実を述べているだけだが」
昔のべスを知っているからこそ、アイギパーンは彼の恐ろしさを知っていた。
あらゆる方向、位置であっても人の急所を適格に狙うことが出来る事。会得している剣術の多さ。そして四大聖にも負けない魔力量。
だがべスもアイギパーンの強さを誰よりも知っている男でもあった。
(あの弾丸が砕けて炸裂する術は初めて見たな……新たに会得した技か…)
近接戦闘用に身に着けた術なのだろう。
アイギパーンは基本、ライフルで遠距離戦闘を得意とするタイプの戦士だ。だが、同時にライフル無しの魔力と肉体のみの近距離格闘も行う事が出来る戦士でもある。
近距離戦に持ち込めば、アイギパーンはライフルを捨てて近接格闘をせざるを得なくなる。そう思っていたが、ライフルによる近接攻撃を手に入れていたとは。
(アイツも成長しているとはな。こりゃあ、楽しくなってきたな!)
べスの表情が変わる。
口角が上がり、眼げギラギラと光っている。
「ったく、面倒になってきたな」
アイギパーンはさっさと決着をつけないと危ないというのを察知する。
べスの戦闘は本人でも気づいていないことだが、彼はいわゆるスロースターター。戦って、体が温まって、それでようやく実力を発揮できるのだ。
しかも戦闘を楽しむタイプのイカレ野郎でもある。
顔に笑いが出始めるタイミングがべスの本領発揮の合図。
「もう距離は詰めらせない、このまま行かせてもらう!」
ライフルを構え、銃口をべスに向け、弾丸を放つ。その直後にレバーを引いてリロード。その動き、まさに一秒にも満たないほどの素早いものだった。そこからさらにトリガーを引き、連射する。
「ははッ!」
べスは刃でその弾丸を振り払う。ガキィッ!ガァン!と硬い物同士がぶつかる激しい音が強く響くと同時に火花が散り、その二発の弾丸は散っていく。
「楽しくなってきたよなァ!だがもっとだ、もっと楽しくやっていくぞォォォォ!」
べスの獣のような雄たけびとアイギパーンの弾丸がさらに激しくぶつかっていくのであった。




