メイガス・ユニオン 13
先に攻撃を仕掛けたのはアイギパーンの方からであった。
べスに向けてトリガーを力強く引く。アイギパーンの持っているライフルの装弾数は七発だが、単発式であるため連射することは出来ない。ミトラが戦っているエルフの少女が持つリボルバー式拳銃のようにはいかないということだ。
しかし、速度、威力は拳銃の比にならない。そこからアイギパーンは魔力を上乗せしているため、さらにパワーが増している。さらに射程距離だって変わってくる。拳銃の射程距離は百メートルが限界だろう。しかし、ライフルになると千メートルだって狙えてしまう。
しかし、べスは簡単にその弾丸を逸らして見せる。
「弾丸を逸らすとはな。そこまでいくと武ではなく曲芸だな」
「武も芸も似たようなものだろ」
そのように軽口を叩きながらもべスの視線は自分の持っている剣の刃を見ていた。魔力で覆っていたとはいえ、あれほどの威力の弾丸を受けたのだ。綻びが出てもおかしくはない。
だが、それは研いだ後のように綺麗なままであった。
「芸にしろ、武にしろ、腕は落ちていないようだな」
アイギパーンはライフルをぐるりと回しながらレバーを引いて薬莢を排出。リロードを行う。
「そりゃあな、最近はガキの相手ばっかりだったが訛っちゃあいないぜ。それよりもお前も相変わらずこんな弾丸、何処で仕入れているんだよ?もう生産工場ぶっ潰れたんじゃなかったのかよ」
「あぁ、潰れたさ。でも生産道具に場所はあった。だからその技術をメイガス・ユニオン売っ払ったのさ。その代わり今後生産された一部の弾丸を俺の方に寄こせって契約でな」
「なるほどな」
話している間にタバコが無くなり、まずい部分しか無くなると吐き捨て、新たに懐から取り出して吸い始める。
「タバコを吸いながらとは、余裕だな」
「まぁな、お互い手の内は知り尽くしてる。だからこの勝負の決め手は単純にパワーとスピードと言った身体能力に、運だからな」
再び刃に魔力を送りなおすと、脚に力を込め一気にアイギパーンとの距離を詰める。その速度はヒュンッ!と風を切る音が響くほどだ。
そして、ズバババババッ!と見えない速度で連続で斬りつけていく。
これは明らかに魔力による肉体強化だけでは説明のつかないほどの威力と速度。であるならば、無詠唱の剣術……しかも上級レベルの剣術を連続発動させているのだろう。
魔力を鎧のように身に纏って肉体を守るアイギパーン。威力を弱めることに成功しているものの、魔力の鎧さえも斬って肉へとその刃は到達する。
体中、切り傷だらけとなりながらもアイギパーンは銃を構え、トリガーを引く。その瞬間──
「射撃術〈一弾散開〉!」
詠唱を開始し、術を発動させる。
銃身から飛び出た弾丸は、すぐさま崩れていく。のだがそのまま威力と速度を落とすことなくべスに向かって襲い掛かる。




