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メイガス・ユニオン 10

 エルフの少女は銃口をミトラに向けトリガーを引く。その後、すぐさま慣れた手つきでハンマーを上げ、連続で弾丸を発射させる。


 まさに、そのスピードは達人の域であった。


 全弾六発を三秒以内に射撃し、それら全てがミトラに向かっていく。


 ミトラはすぐさま剣を構えなおし、その炎を纏わせた刃で全て溶かし払おうと考えた。しかし──


 「おや?」


 その弾丸は真っすぐ飛ばす、物理法則を無視した動きを始める。それはまるで生きているかのように蛇行し、また別の弾丸は弧を描きながら、ミトラの背後を取るように遠回りに向かってきている。


 (遠隔操作か……)


 この程度の事は大して驚く所ではない。弓術の中にも魔力を使って放った矢を遠隔操作するものがある。剣術に長けているミトラであっても、簡単に出来るほど基本の技だ。


 しかしながら矢とは違って弾丸は小さく、見切るのは難しいだろう。剣の炎で溶かすにしても四方八方から動いて進む弾丸全てに対応するのはミトラであっても不可能。


 (でもまぁ、問題はないでしょ)


 向かってきているのは所詮魔力を纏っただけの、ただの鉄の塊だ。魔力で体を覆っておけば、そう大したダメージは入らないだろう。


 そしてこのミトラの考えこそがこの辺りはこの世界において銃が普及しなかった理由でもある。火薬は実は二千年以上前には発明されており、拳銃も昔から存在はしていた。そして銃もかなり多くの人たちが持っていた。やはり、弾を込めてトリガーを引くだけで低級の魔獣にならば倒せるうえ、戦争でも人を簡単に殺せるその銃という道具の便利性は凄まじいものであった。


 しかし、近年の印刷技術が上がり、誰もが魔術書が手に入るようになった。その結果、今が戦いに身を置かない者でも簡単に魔力の生成に、魔力操作、そして下級魔術程度なら身につけれるようになった。火薬で発射された鉄の塊程度なら簡単に魔力で受け止められるようになったのだ。


 もちろん、弾丸に魔力を込めればより強い威力を出すことが出来る。しかし、鉄は魔力伝導率が低く、術を仕掛けることが困難。魔力を生かした戦いではその真価を発揮する事が出来ない。


 ちなみに矢の方も確かに先端についている(やじり)も鉄である。が、棒の部分が魔樹と呼ばれる木の枝を使っており、それが高い魔力伝導率を持っており、魔術も仕掛けれるようになっている。


 一時期はその魔樹で弾丸を造る事を考えた者たちもいたが、火薬の力に耐えきれず発射の前に壊れてしまうため、鉄以外の代用品を見つけられることはなく、銃は使われなくなってしまった。


 これらの事からミトラは向かってくる弾丸に余裕の表情であった。


 しかし──


 「ッ!?」


 ミトラの背後を狙っていた弾丸が体に纏っていた魔力を簡単に貫通し、皮膚を裂いて肉を壊しながら体内へ侵入していくではないか。


 「な…に……が!?」


 その後も右腕、左脚のふとももと二発の弾丸がミトラにダメージを与える。

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