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メイガス・ユニオン 7

 このアナトと刀の男の戦闘を少し離れた場所で眺めている二人がいた。


 建物の屋根の上。そこに居る一人目はカウボーイハットを被った中年の男。服の上からとは言え視認出来るレベルで鍛え上げられた体を持っていた。見た目も若々しいのだが、雰囲気から出る貫禄と無精ひげから決して若い年齢ではないのが分かる。


 もう一人の方は中性的だが胸に少しふくらみがあることから女だと認識出来る。小さな身長に、細い体。そしてハンチング帽を深く被っているが、少しばかり見えるその顔も少し幼く感じる。多分、十四歳か、十五歳辺りだと思われる。だが、その年齢も決して正しいものではないだろう。なにせ、耳が長く、エルフの特徴を持っている。長寿の種族は見た目だけで年齢を判断できない。


 そんな二人にも共通しているものがあった。


 それは銃を持っていることだ。


 カウボーイハットの男は単発式のレバーアクション式ライフル。ハンチング帽を被ったエルフの少女はリボルバー式拳銃であった。


 「あれ……良いのかな、師匠?」


 エルフの少女が刀を持って暴れ戦う男を指でさす。


 「んー、知らね。だって俺たちも雇われ傭兵。言われた事しかやるしかないのよ」


 そういって、カウボーイハットを被った男は背負っていたライフルを取り出し、弾丸を込める。


 「ここからは俺たちも別行動だ。俺は奥の方……アナトのいる城、つまりクソみたいにそびえ立っている真っ黒な建物へと向かう。お前は自由に動け」


 「了解」


 そうして、その二人は分かれて別々に行動を取り始める。



 同時刻。


 トーゼツとアナーヒターは結果、何にも旅の事で決まることはなくとりあえずお昼を食べようか、という話になった。広げていた地図を畳み、受付カウンターを通って外へ出る所であった。


 カウンターの傍に置かれていたラジオから臨時ニュースが流れ始める。


 神都は世界の一、二を争う世界都市で国民一人当たりの経済。いわゆるGDPも高い街だ。世界的にようやく普及し始めたラジオはとっくの昔に国民一人につき一個は持っていると呼べるほど安価で手に入りやすいものになっていた。


 『緊急速報です。繰り返します、緊急速報です』


 さっきまで軽快な音楽が流れていたというのに、そんなラジオから急に真面目な口調で流れ始めたそのニュースに立ち止まり、二人は耳を傾けてしまう。


 『先ほど、何者かによって神都が襲撃を受けているという情報を受けました。一般市民の皆様は巻き込まれないよう避難してください。繰り返します──』


 冒険者本部でもこのニュースを聞いて多くのギルドスタッフ、冒険者が一体、何事なのだろうか?とざわめき始める。それと同時に動きだす者も居た。


 この冒険者本部は一般市民の避難場所に指定されている建物でもある。そのため、今から多くの人たちが流れ込み始めるだろう。


 数十分前のミトラの話を聞いていなければ、自分たちも何が起こっているのか分からず混乱していたかもしれない。


 「かなり今回の襲撃では暴れているんだな」


 何か根拠があるわけじゃないのだがアナーヒターは何度もメイガス・ユニオンと関わったことがあるため、その経験として理解する。


 今、暴れているのは本当の目的を逸らすために行っている陽動である、と。


 彼らは冒険者ギルド連合を正面から喧嘩を売るような相手ではない。どちらかと言うと裏で企んでいる事の方が多い。


 しかし、ラジオでも緊急避難速報が流れるほどには暴れている。


 つまり──


 「これはたぶん、ユニオンの連中じゃないな。雇われ傭兵かなんかを利用しているな」


 「そうなのか?まぁ、ユニオンから来たのか、それともユニオンに雇われた傭兵であっても、ミトラたちであれば負けることはないでしょ」


 トーゼツとアナーヒターはミトラたちを力を信頼し、そのままラジオの避難速報に則って冒険者連合本部に留まることにしたのであった。

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