アーティファクト 7
支払いも済ませた。トーゼツは目的の武器を購入できた。もうここには用はない。
ミトラ自身も武具を見たかったが、今はアーティファクトの支払いのせいで、財布の中身はゼロだ。貯金はまだまだあるが、手持ちに金が無い以上、今日何かを買うことは出来ない。
「それじゃあ、私はもう行くとするよ」
そのように別れの挨拶を述べて立ち去ろうとすると
「おや、あなたは武具を見ていかないんですか?」
とヘイフォンは声をかけて彼女の足を止めさせる。
「いやぁ、この通り、財布の中身がさ……」
そうして、ミトラは空っぽになった財布をひっくり返し、何度も振ることで、素寒貧になったことを示す。
「いやいや、見るだけならお金はかかりませんし、支払いは後日でも良いですよ。あなたは剣聖で、かなり信頼出来る方なのはもう分かっていますのでね。それに、割引ぐらいはさせてもらいますよ」
そのようにグイグイと食い下がっていくヘイフォン。
「だとしても、どんな武器があるんだい?私は剣聖、その名の通り、剣しか使わない。例外的なものを言えば、鎧なんかの武具だけど、それも剣術次第でどうにかなるからなぁ」
トーゼツのように、アーティファクトを売ってくれれば嬉しいのだが、さすがにそんな美味しい話があるわけがない。それに、先ほどかテントの中を通っていく時、置かれていた武具を見た限りミトラの戦闘に追いつけるものはさほど無かった。きっと戦闘の最中に折れてしまって使い物にならなくなるだろう。
やはり、貴重で質の良い魔鉱石を、優れた職人の手で加工された武具でようやく、彼女が扱えるレベルの武具になるのだ。この店もそれなりに使える武具が商品として並んでいるとは言え、それは周囲の店に比べればの話。
ミトラのような世界屈指の戦士のための店ではない。
そのように考えているのを感じたのか、すぐさまヘイフォンは彼女のレベルに見合ったものがあると説明し始める。
「実は、私自身、少し売り捌くのに困っている剣があるんですよ。少しまっててください。荷馬車の方に積んでいるので撮ってきますからね」
支払いの金を置きに行ったり、剣の箱を戻しに行ったり、何度も入っては戻って来るこの荷馬車から持ってきたのは、一本の銀色の刃を持った剣であった。
持ち手は不思議なものであった。きっと、中古品なのだろう、見た目は持ちやすそうに削ってあるな。ミトラは最初、そのように思っていた。しかし、ヘイフォンから渡され、自分の手で握ったその瞬間に、一変する。
それは、まるでスライムのように変幻し、ゴムのような弾力であった。そこからみるみると自分の持ちやすい形へと持ち手が変化していく。
「なんだ、これは?魔術付与……いや、魔術なのか?それに、この剣…白い……?いや、トーゼツの持ってたような魔鉱石じゃないね。単純に光沢がすごい。斬れ味も悪くはさそうだし、でも売り捌くのが難しいって言ってたわよね?」
そういうと、ニヤリ、とヘイフィンは笑う。それは、ドッキリを仕掛けようとするイタズラする子供のような表情であった。
「よく剣身の方を見てください」
そう言われ、ミトラはもっと間近でじっくりと眺める。すると、剣身の所々に線……というか切り込みのようなものが入っている。ただのデザイン、には見えない。何か仕掛けがあるとしか思えなかった。
「見えたようですね。では、今度は魔力を流し込んでみてください」
再び言われるがまま、剣に魔力を流し込む。すると、
「うわっ!」
バチッ!と鉄の響く音が聞こえてきたかと思えば、剣身の一部が線に沿って砕けたかと思えば、その破片は地面に落ちることなく、ミトラを中心に空中へ浮かんでいた。




