メイガス・ユニオン 3
改めて解説するが、冒険者ギルドは世界各地にある組織であり、それを運営している者も地方によって異なっている。場所によっては国が、また別の場所では貴族が、はたまた民営によって動いている場所もある。それらのギルドの代表者が集まり、出来たのが冒険者ギルド連合だ。
そしてその本部のリーダーを調和神アフラに据えることでまとまっている。もちろん、アフラによる独裁的な組織ではない。それぞれの代表者にも一部の特権が与えられており、かなり民主的な組織となっている。
そんな冒険者ギルド連合にも敵対組織のようなものがある。
それがメイガス・ユニオンだ。
このメイガス・ユニオンを説明するためには、組織を設立した一つの大国。セレシアを説明しておかなければいけないだろう。
このセレシアはエルフ単一種族国家で、エルフ至上主義を掲げている。そのうえ、魔術の力、いわば術力を文化的にも社会的にも重要視している国でもある。
そんなセレシアには冒険者ギルドが受け入れられず、またそれに対抗する形でメイガス・ユニオンという組織を設立した。もちろん、設立理由はそれだけではないうえ、メイガス・ユニオンはどちらかというと魔術の研究、実験機関に近い。
だが、それらを話すのは長くなるため別の機会としよう。
そんなメイガス・ユニオンが裏で何やら動いているというのが確認された。過去には冒険者本部が襲撃されたり、アフラ暗殺計画を企てていた事があった。今回も何か起こるだろうとして神都周辺の警備が普段よりも固くなっており、また多くの冒険者が待機している。
「それで私も待機メンバーとして神都から出られないってわけ。やっと休暇が貰えたから何処かに行こうと思ってたのに……」
ミトラは懐からいつも持ち歩いている水分補給用の革袋を取り出し、水を飲み始める。
「まぁまぁ、言うて神都も色々あるから良いじゃないか。見慣れている街で、自然があるような場所じゃないけど、世界都市の中でもトップクラスだしな」
トーゼツはミトラに対し、そのようになだめる。
実際、多くの商人が往来し、また世界中からスカウトされた強い戦士たちが訪れる場所でもある。あらゆる文化が混ざり、豊かな都市へと発展している。
トーゼツは神都出身で、ミトラも住んで数年は経つ。神都の観光名所なんて回った所で楽しくはないかもしれない。だが、コンテンツの量で言えばなんでもある町なのだ。
「でもなぁ。私はアクティブな性格だからなぁ。都市の中じゃあ思う存分、体が動かせないじゃなないの。あーあ、草原とかを駆け抜けたいなぁ」
コイツはチーターか?と思ってしまうような発言するミトラだった。
そんな会話の最中
「おや?」
ミトラのズボンのポケットの中で何かが震え始める。彼女はすぐにポケットから震えてきた物を取り出す。それは魔法陣の描かれた小さな木の札であった。




