メイガス・ユニオン
次の日。無事にトーゼツは冒険者ギルド連合本部の特異課に正式所属の手続きが終わり、これからアナーヒターと黒いローブの者たちと支配の厄災の行方を追っていこうと連合本部の一階、受付のカウンターがある待機場所で話し合っていた。
「さて、これからどうするか……」
トーゼツは世界地図を眺めながら考え込んでいた。
「今の所、ローブの奴らの情報は皆無。支配の厄災も消息を絶ってから目撃情報はない。とりあえず、これまで通り旅を続ければ良いんじゃないかしら?」
確かにアナーヒターの言う通りだ。
ローブの集団は一部の者の顔と名前しか把握していない。人数、活動拠点に活動範囲、目的。その全てが不明だ。どのように動けば良いのか、逆に分かる者が居れば教えてほしいぐらいだ。
盗賊団や傭兵、裏社会で暗躍しているような殺し屋であれば裏社会で生きる情報屋に聞けば分かることかもしれない。だが、ローブの者たちは決して金や権力で動いていない。裏社会の存在では決してないだろう。
相手がしっぽを出したり、わざとこちらに出向いてくれることを祈ることしか出来ないのが現状。
だからと言って気ままな旅をし続けるのも少し違うような気もしてくる。
「うーん、そうなんだが……。さすがにスールヴァニアに手がかりが残っているわけじゃないだろうし。厄災の核を求めているのは分かっているんだけどなぁ」
トーゼツは頭を抱える。
これまでの旅は厄災討伐を目標に掲げた旅でもあった。だが、その厄災を倒した後に残る核をローブの者たちが集めているとなると、厄災を倒すのも危険になってくる。
支配の厄災はローブの者たちの味方になるような事はなかったが、今後も支配の厄災同様に倒したのちに復活して自由になる厄災が現れるかもしれない。そして、ソレらがローブの者たちの味方になったらどうすれば良いものか。
「アナーヒターは自主的に動く俺とは違ってアフラ様から任務を受けている形で動くんだろ?何かアフラ様は言ってなかったのか?そのー……これからどのように動けば良いの?とか、ローブの者たちが出てくる可能性のある場所は?とかさ」
「何も言われてないわね。実質、トーゼツと同じようなものよ。自主的に動いて自分から情報を取ってこいっていう感じよ」
「そうかぁ……」
やるべき事はあるのにその過程が分からない。
よく目的のためならば手段を厭わない、なんて言葉があるがその手段すら一切、見つからない状況になるとこんなにも行動に移せなくなるものだったのか。
そのように広げた地図をただ眺めるだけでうーん、と唸っている二人に近づく一つの影があった。
「あら、何か考え事でもしているの?」
そういって二人に話しかけてくるのは見覚えのある顔、姿。一緒に二度も厄災討伐を行い、この件に無関係ではない剣聖ミトラ・アルファインであった。




