表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/606

特異課 13

 ここでトーゼツが槍へと武器を変更したのにはもちろん、理由がある。


 何度もこの戦いで説明しているが、双剣では距離を取る必要がある。しかも、双剣は素早く動くために通常の剣に比べて小さく、短い。一、二メートルという狭い範囲内まで近づかないと当たらないだろう。


 それでもトーゼツがこの双剣を使って近距離戦へと挑んだのはこの双剣には炎と氷の魔術が組み込まれているからだ。しかし、それを使ってバレてしまった。


 炎の魔術しか発動させていなかったが、もう片方の剣にも何かしらの術が組み込まれているのは気づいているだろうし、炎を使ってもべスにはダメージを与えられなかった。その時点で双剣を使うメリットがもうなくなってしまった。


 それに対し、槍は剣よりも長いから距離を取りやすい。また貫通力も剣よりあるだろう。しかも、この槍も神代の遺物(アーティファクト)であり、上級レベルの術が組み込まれているうえ、魔力を生成する機能まである。


 「あれも神代の遺物か(アーティファクト)かよ……!」


 べスもすぐさまその事を見抜いてみせる。まぁ、さすがに武器が魔力を生成するという本来ありえない事態を見逃すはずがない。


 「すごいですわね。これまでトーゼツから出てきた武器は全部、神代の遺物(アーティファクト)ですわよ!」


 エイルも神代の遺物(アーティファクト)を見るのは初めてじゃないが、三つ以上も個人が所有している事にとても驚きである。


 トーゼツはこれで迂闊には近寄れまいと判断する。べスからすれば同じように炎を吹き出すのか、それとも全てを凍らせるほどの冷気でも出るのか。はたまた予想もつかない術なのか。槍にどんな術が組み込まれているか分からないからだ。


 しかし──


 「はははははァ!」


 べスは楽しそうに笑いながら問答無用で接近し、


 (は?)


 トーゼツの胴体に深い一撃を与えていた。


 皮膚を斬り、肉を裂き、内臓が飛び出そうになる。痛みで意識がなくなり、思考出来なくなる。が、すぐさまに傷口が修復し、意識が強制的に戻ってくる。


 「うおッ!」


 一体、自分の身に何が起こったのか。意識が先ほどまでなくて、記憶の混濁が起こっているトーゼツには理解出来なかった。


 「まじかよ、死が確定した瞬間に復活か!だったらこれは──」


 トーゼツが体を動かす前には、ベスの刃はトーゼツの首を切断していた。


 だが、その首も離れきってしまう前に骨がつながり、血管が接続され、肉を生成。皮膚は何事もなかったかのように再生していた。


 「おワァ!」


 より一層、消えたり戻ったりする意識に混乱を覚えながら、トーゼツはこの試合の事も忘れてとにかく力を込めて剣を振り回す。


 だが、それは無駄な抵抗であり、何の動きにもなっていない。まるで子供が一心不乱に振り回しているような……素人の動きでしかなかった。


 そんな動きにベスは簡単に掻い潜って容赦無く心臓を貫く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ