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特異課 11

 べスによって百回近く〈瞬時断絶しゅんじだんぜつ〉」を打ち込まれたトーゼツの体はあちこちに斬り傷が出来ており、肌も溢れる血によって真っ赤に染まっていた。


 (まずいな!魔力で身を守るだけで精一杯。それもいつまで持つか……!)


 トーゼツは斬られながらも双剣を持った両手に力を入れる。そして──


 「おおおおおおおおッ!」


 その双剣のうち、片方の赤い剣が灼熱の熱気を散らせる。それによりべスの剣がジュワッ!と溶け始め、また皮膚も焼け、髪の毛も焦げる。


 これはまずい……!だが、ここで退けばもう一度、トーゼツに流れを持っていかれかねない。


 ならば、取れる選択は一つ。


 「このまま押し切らせてもらうぞ!中級剣術〈アイス・スラッシュ〉!」


 べスの持つ剣が冷気を纏い、氷に覆われていく。しかし、その氷はトーゼツの赤い剣から散っていく熱によってすぐに水へ変えられ、蒸発していく。


 しかし、それで良いのだ。この氷は剣がこれ以上、溶けないようにするための氷であり、トーゼツへダメージを与えるものではないからだ。


 トーゼツは炎の火力を上げ、必死に腕に力を入れ、抵抗しようとする。だが、べスの動きが止まることはなく、気づけば倒れており、意識も朦朧もうろうとしていた。


 「はぁ……はぁ……」


 べスにも血が多く付着していたがその全てはトーゼツの血であった。また上級魔術の連続発動でそれなりの魔力量と体力を消費したようで、激しく息切れをしている。


 だが、その表情は余裕のもので、表情こそ少し疲れているが汗は一滴も流れていない。まだまだ戦闘継続できるような状態。ボロボロのトーゼツとは真逆の状態であった。


 「さすがに戦闘はもう出来ないだろ?この勝負、これで終わりだな」


 べスは剣にべったりとついた人間の肉油に、べったりと付いた血をポケットに入れていたハンカチで拭き取ると鞘へと戻す。


 「お前の強さは大体分かった。確かに『職』が無いにしては異常な強さだ。だが、四大聖には及ばないな。まっ、成長の見込みもあるし、これからに期待だな」


 倒れているトーゼツを見下ろす形でその言葉を言い放つ。その頃にはトーゼツの意識は完全になくなり、眼は既に死んだ者の眼であった。


 「さて、エイル。コイツを治してやって──」


 その時だった。


 誰しもが戦いは終わったと思っていた。


 この戦いを見ていたポットバックとエイルの二人もそう思っていた。もうトーゼツは死んだ。仮に生きていたとしても戦闘続行できない、と。


 「ッはァ!!!」


 眼は生を取り戻し、トーゼツは息を吹き返す。先ほどまで絶えず傷口から流れていた血は止まり、魔力量もかなり戻ってきている。


 「何が……終わったって?」


 トーゼツは双剣を構えなおし、「ぺっ!」と口の中に充満している鉄の味を少しでもなくすために血を唾と一緒に吐き出す。

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