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アーティファクト 6

 「百……千……万…っとちゃんとありますね。お支払い、ありがとうございます」


 ヘイフォンのにこやかな顔とは対照的に、財布の中身が急激に減ったことで、一気に懐が寒くなってしまい、ブルーな表情へとなるミトラであった。


 彼は受け取った金額をすぐに荷馬車の方へと持っていき、置いて戻ってくるのであった。


 「しかし、本当に支払いの方は良かったのですかな?」


 商人はお金を稼いでなんぼではあるのだが、さすがに彼女の様子を見て何か心にくるものでもあったのだろうか。彼は心配の声をかける。


 「え、ええ。私が言ったことだし、しょうがないよ。それに、もともと剣を壊しちゃった私が悪いっていう話だしね。でも、少しは遠慮して欲しかったなぁ、というのが本音かな」


 それは冗談でも言っているかのような、軽く笑い声を含ませながら喋るミトラであった。


 「はははっ、確かに彼は遠慮しない所がありますからね。まぁ、自己主張が出来ない者よりかはマシですよ。それに、彼のそういうところを私は買っているところもありますからね」


 「……そういえばあなた、収集して飾るタイプの人間って言ってたわよね?どうして、トーゼツには売っているの?彼が冒険者で実践で容赦なく使う、あなたとは真逆のタイプの人間っていうのは分かっているのよね?」


 「ええ、もちろん」


 「じゃあ、なおさら疑問なんだけど、どうして彼には売るの?」


 ヘイフォンはにやり、と口角を上げて笑う。その姿は少し不気味で、しかし彼のその目は過去を懐かしむような目へと変わっていた。


 「まず、一つは彼が私と同じ道具を愛する者だからですよ」


 「愛する?」


 ならば、絶対にトーゼツは当てはまらない。


 ヘイフォンの愛するというのは、道具を大切にするということである。それは長持ちするとか、何度も直して使い続けるとか、そんな話ではない。コレクターである以上、ヘイフォンを基準に考えればそれは丁寧に、長く保管出来るかという話であろう。


 トーゼツはそんなキャラじゃない。


 そして、それはヘイフォンももちろん、分かっていた。だからこそ、それを踏まえての発言であった。


 「彼はその価値を知らない愚か者ではない。しかし、それを使わずに飾る、保管する、歴史の重要古物として研究対象にするというのは所詮、現代の人間だからこそ見い出す使い方なのです。本来、造ったものは戦いを想定として造り、また武具も戦士のためにあるもの。それを理解しているからこそ、トーゼツ様はその価値あるものを容赦なく振るう。本当の意味で、その道具に死が訪れるその時まで、ね」


 それは、一つの信念。


 ヘイフォンが重要視しているたのは、道具を愛しているかどうか、ではなかった。道具に対する考え方、愛し方は人の数だけ存在している。そして、その意識の強さ、信念を見て彼は売っていたのだ。


 「まぁ、他にも魔物から助けてもらったり、昔から縁がありましてね。まぁ、本来はアーティファクトはどれだけ金を積まれても売ることはありませんよ」


 そうして、彼は剣が無くなったことで空き箱となったその箱を閉じ、鍵を閉める。


 「その箱はどうするんだ?」


 「保管してきますよ。この箱も神代の頃のものなのでね」


 確かに、自然の染料で紫色をふんだんに使っているそれは、古物であろうとなかろうと、かなり価値のあるものだろう。それを彼は理解しているからこそ、重要に保管するのだろう。

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