特異課 6
確かに調和神アフラの言っていた通りであった。
ここはある意味自由で、連合本部の中では異質な場所だ。管理している課長のべスがこのような人物なのだ。きっとここに配属されても本部に縛られることなく、それでいて本部のバックアップも受けることが出来る理想の環境だ。
ポットバックのようなよく分からない馬鹿もいるが……まぁ、それさえ目を伏せれば……。
べスに返す答えは決まった。
「ぜひ、特異課に入らせてくれ」
その言葉を聞いてべスは口角を少し上げ、微笑する。
「それでは、改めましてようこそトーゼツ・サンキライ君。今日からここ特異課が君のホームであり、ここの仲間の一員だ」
こうして、トーゼツも晴れて冒険者連合本部に入ることが出来た。
それから数十分後……。
四人は移動し、調和神アフラの居る黒い建物の中にある訓練場に来ていた。
「さて、もう一度言っておくが別に入団テストなんてものは存在しないし、アフラ様の案内で来たんだ。トーゼツを拒む理由はないが一応、強さぐらいは測っておこうと思うが良いか?」
べスは腰にぶら下げている鞘から剣を抜く。
トーゼツ達がどうして戦うために本部から出て黒い建物まで移動してきたのか、それにはもちろん理由があった。
冒険者本部内にも訓練施設はあるのだが、ダンベルや懸垂するための器具しか置いていない。体力や筋肉作りは出来るかもしれないが、実践向きの場所ではない。
それに、本部は結局は事務仕事をする場所。本来ギルドは冒険者を集め、いろんな人々から依頼書を貰い、適切な冒険者に依頼を対応してもらうがメイン。
ほかにも冒険者証明を発行する事もあるし、冒険者たちの情報交換の場でもある。つまり戦士を育てるような訓練場があるような所ではないということだ。
しかし、本部の人間は地方のギルドとは比較できないほどの困難な任務も対応する冒険者が集まった組織。やはり思いっきり訓練出来る場所を求めていた。
そこで調和神アフラが自分の住むこの場所に、わざわざ実践的な訓練場を設けたのだ。
そんな訓練場の中には模擬戦が出来る広い部屋もあった。
トーゼツとべスの二人はある程度、距離を取ったうえで全身を魔力で覆い、戦闘に備えている。ポットバックとエイルの二人は巻き込まれないように部屋の隅で二人を見ていた。
「ああ、問題ないぜ。だが、言うて模擬戦だろう?ルールはどうする」
トーゼツも指輪に魔力を込め、空間に穴を開ける。だがすぐに武器を取り出すことはせず、べスのルール説明するのを待っていた。
「そうだな……基本何でもアリにするか。戦闘不能か、負けを認めることで勝敗を決めよう。今回はエイルも居ることだし殺しもオッケーだ」
「了解」
そういって、ルール説明を聞いたうえでトーゼツが指輪の力で最初に選んで取り出した武器はクロスボウであった。