特異課 3
ポットバックが死んで数十分後。
トーゼツはべスが淹れてくれたお茶を飲んでいた。
テーブルにはちょっとしたお菓子もあった。
(良い色と、良い香りの紅茶だ……)
ずずず、とゆっくり飲んでいく。
窓からは日差しが入ってくる。今は夏前であり、少しずつ気温が上がり始めている。が、まだ風は少しばかり涼しく、気持ちの良い日であった。
本当にとても良い一日だ。
「死体がなければなぁ!!!!」
思わず本音が声に出てしまったトーゼツはべスに質問をしていく。というか、聞きたいこと、聞かなければならないことしかない。
「ここは何なんだ!?ポットバックをなんで殺したんだ!?!?本当に冒険者本部の中にある課なのか!?これが日常なのかよ!!!!?」
「まぁ、落ち着け。初心者」
そういってべスもまた紅茶をずずずっと飲んでいく。
「ここの課はいわゆる問題児を集めた課だ。と言うとかなり悪い奴らの集まりのように感じるが、実際はそうじゃない」
いやいや、実際そうじゃないのかよ!とツッコミたくなる。
ポットバックは出会いがしらトーゼツを殺そうとし、べスはポットバックを殺した。それは悪い……というよりも常識を持ち合わせていないヤバい集団でしかないだろ!
「まぁまぁ、顔に出てるぜ、言いたいことが。とりあえず最後まで聞けや。ポットバックみたいなヤバい奴はほかにもいるが……それは本当に二、三人だ。じゃあどういう問題児の集まりなのか?と言われれば……そうだな。一言で表すなら『戦士』ではないということだな」
『戦士』ではない……?
この世界において、戦士という職はない。『戦士』とはそのままの意味になるが、いわゆる戦う者の事を指す。つまり魔術師であっても、剣士であっても、どんな職であれど戦う事をメインとしているのならば戦士と呼んでいる。
「より具体例を挙げるなら、うちの課にはアルデットっていう奴がいるんだが、ソイツの職は学者。つまり『戦士』向けの職じゃない。でも、ソイツには固有技能があった。それが植物を操るっていう能力で、かなり戦闘に応用できる代物だった。ほかにも職は戦士じゃないのに、色々な理由で冒険者となって活躍している固有技能持ちの集まりがここなんだよ」
なるほど、そういうことであればまだ納得がいく。
それに特異課という課の名前もある理解する。
「じゃあアンタも固有技能持ちなのか?」
これらの説明通りならばべスも固有技能持ちだといういうことになるが、一体どういう能力を持っているのだろうか?
「俺は固有技能持ちじゃ無ェ」
「じゃあなんでここに配属されてるうえに課を任されているんだ?」
純粋なトーゼツの質問であった。だが、それに返って来た回答は意外なものであった。
「それは俺が剣聖になる可能性を持っているからだ」