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里帰り 10

 トーゼツは調和神アフラとの話も終わり、エレベーターに乗って下へと降りる。


 アナーヒターと一緒に帰ろうと思っていたが、まだ少しばかり話があるということでまだ調和神アフラの元にアナーヒターは残っている。


 一階につくと、そこには誰もいなかった。


 来た時にはあんなにアナーヒターとアナトの二人に押し寄せてきていた冒険者に魔術師、記者などの者たちが誰一人いなくなっているのだ。


 先に帰ったアナトがどうにかしたのか。それとも他の冒険者によってお引き取り願ったのか。


 どちらにせよ自分には関係の無い話。もしまだここに多くの人達が残っていたとしても、トーゼツに用がある人なんて誰もいない。


 こうして玄関から出て、外へ出るとトーゼツはさっそくギルド本部へと向かい始めるのであった。



 そして場所を少し戻し、調和神アフラのいる場所では……。


 「それで?私に話ってまだ何かあるの?しかもこの感じ……二人っきりで話したい事があるようね?」


 「本当にアナタは先読みするのが得意ですね」


 この数年間、久しぶりに会ったものの彼女が何処も変わっていないことに懐かしさと、この安定さに喜びを感じながらアフラは話を進めていく。


 「トーゼツの件です。彼が少しばかりおかしいこと。アナタも少しばかり気づいているのではないですか?」


 そう言われ、アナーヒターは「やっぱり……」とつぶやく。


 少しばかりおかしい、なんて言葉では説明できない点が多すぎる。


 『職』を持たないのに並の冒険者を超えて四大聖レベルの実力者であること。限定的ではあるが何回か絶大レベルの術を発動させていること。そして『職』が無いゆえにどんな武器をも使いこなせるそのオールラウンダーな動き。


 神々から才能を認められて与えられる祝福こそが『職』。トーゼツは神々から才能が無いからこそ『職』が与えられなかった。


 トーゼツの旅に付き合おうとしたのも、彼が心配だったからなのが大きい。


 アナーヒターはトーゼツの事を昔から知っていた。彼女は術聖で、長命のエルフ。冒険者本部に入って二十年以上はある。そしてトーゼツはこの街出身、育ちだ。


 小さい頃から可愛がっており、またトーゼツも幼い頃は優秀な冒険者として活躍していた自分によく懐いていた。だからこそトーゼツが『職』が無く、それでも冒険者としての夢を諦めきれない事を知って、ある日一緒に長い旅へと飛び出したのだ。


 しかし、彼が成長する中で本当に才能がないのか?と疑問に思うようになった。


 そして今、この話をアフラから持ち出されて確信を得る。


 トーゼツは才能が無いから『職』を与えられなかったわけではない。


 才能を持っているのにも関わらず、意図的に『職』を与えられていないということだ。


 それと同時に怒りもわいてくる。


 「あの子は『職』が無かったから多くの人達から蔑み、憐れみ、同情されてきた。その人には理解出来ないほどの苦労した。自分に才能が無いことに憎み、怒りを持つこともあった。今の彼を見れば結果的にそれは良かったのかもしれんない。でも、もしもそれを意図的にやっていたというのであれば──」


 「アナタには話しておくとしましょうか。アナタが一番、トーゼツと居た時間が長いでしょうしね。しかし、他言無用でお願いしますよ」


 そうして、アフラはアナーヒターへと語り始める。


 神々にとっての、トーゼツ・サンキライの正体を。

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