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里帰り 8

 数十秒、としばらく経ったのちにハっとして意識が脳内から現実へと戻り、すぐさま思考を切り替えると残っているトーゼツとアナーヒターへと意識を向ける。


 「すいません、少しばかり場を乱してしまい……アナトへは私が直接教えておくのですが、本当に私は厄災の『核』について把握していませんでした」


 それを聞いてアナーヒターは質問をする。


 「調和神の力を使っても?確か神の術には未来予知があるでしょ?」


 「確かにあります。しかし、神の術とはいえ万能の力ではありません。予知できるのは『私と関わり合いのあるモノ』に限定されます。分かりやすく例を持ち出すのであれば、私はアナーヒター、トーゼツの二人の未来を予知することが出来ます。なぜなら私はアナタたちとこうして直接会って目を合わせ、話しています。このように一度接触したモノであればソレらの未来予知を可能にします。しかし、黒いローブの者たちの未来は予知不可能。なぜなら彼らとは会ったことも無ければ、これまで知らなかった者たちだからです。さらにアナタたち二人の未来予知も『黒いローブの者たちと今後一生接触しなかった場合』の予知になります。つまり黒いローブたちが今後どのように動き、どのようにアナタたちの前に現れるのか。それを知るのであれば私が直接、黒いローブの者たちと接触しなければなりません」


 神の術は現代の魔術学を超えた、まさに人知外の術であると思っていた。しかし、案外それは神でも扱いの難しいものなのかもしれない。


 こうして調和神アフラでさえも自分の予知に振り回されているのだから。


 「まさか厄災の『核』がこうして悪用されるとは……。今後、厄災の扱いについても考えなければなりませんね。ローブの者たちと支配の厄災の動向も不明。人手が欲しいのに、情報漏洩を防ぐためにも少数精鋭で動かざる得ません」


 それを聞いてアナーヒターは「あぁ、なるほど」と何か頭の中で納得する事があったようだ。


 「それでローブの者への任務を私に与えたのか。多分、トーゼツとアナト、あとはエルドとミトラか。全員にこれらの任務を与える感じ?」


 自分の伝えようとしていた事を先に当てられた調和神アフラは、説明する手間がはぶけたと思い「ふふ」と軽く微笑み、改めてトーゼツへと自分の口で伝え始める。


 「その通りです、術聖アナーヒター。そして、私がアナタにこうして直接、会いたかった理由でもあります。やはり直接見て確信しました。トーゼツ・サンキライ、アナタにも術聖アナーヒターと同じ任務を与えます。受けてくれますか?」


 アフラはじっとトーゼツを見つめる。これはあくまで任意であり、トーゼツ自身が決める道であるということを。


 そして、トーゼツは迷うことなく、ハッキリと答える。


 「嫌だね!」


 その言葉に一番驚いていたのはアナーヒターであった。


 「えっ、ちょちょちょ!私と一緒に任務やるのがそんなに嫌なの!?」


 「いやいやいや、そういうわけじゃねェよ!ただ、俺は自由にやりたいだけだ。俺は基本、多くの人たちを救いたいだけだ。冒険者になった理由もそれだ。なのに任務とやらに縛られるのは嫌だってハナシさ。黒いローブの奴らも、支配の厄災も追いかけながら俺はこれまで通りギルドの依頼を受けていく。何か新しい情報があればアンタにも報告する。これで良いだろ?」


 それを聞いた調和神アフラはその答えを読めていたかのように、動じることなく頷き、トーゼツの言葉を肯定する。


 「ええ、構いませんよ。トーゼツ・サンキライ、アナタの活躍に期待しておきます」

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