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里帰り 5

 アナーヒターはエルフだ。言わずもがな、普通の人間とは寿命が違う。


 見た目ではまだ二十代前後に見えるかもしれないが、既にアナーヒターがギルド、学連に在籍していた日数は数十年と長い。


 そんな彼女が急に何も言わずに消えたのだ。


 組織が揺れ動かないわけがない。


 起こった事全て、アナーヒターが悪いというわけではない。それに、これまでアナーヒターに頼りっぱなしであったというのが分かるキッカケでもあった。


 しかし、伝言も報告も……休暇を取るなんて言うのもなく消えた。


 任務、仕事、研究……彼女の関わっていた全ての事柄が事実上、崩壊し凍結してしまった。


 何かしらの処罰が下されるのは仕方の無いことなのかもしれない。


 アナーヒターは覚悟する。しかし──


 「あなたへの処罰に任務を与えることにしました」


 「……任務?」


 意外であった。


 一か月間の拘束であったり、もっと厳しい労働だったり、そういうものだと思っていた。だが任務をこなすだけとは。もう少し自由の無い処罰だと思っていた。


 「ふふ。驚きですか?術聖であるアナタにとっては自由のない作業は苦ではあるかもしれませんが困難なことではないでしょう。それにこれまでの功績を考えればアナタはこれまで良くやってくれました。周囲の人間はアナタを許さないかもしれません。しかし私は少し無断で長い休日を取ったとしか見てないので。でもそれでは示しがつきません。一度例外を認めると、今後に大きく影響が出てしまいます。それで仕方なく任務を与えることにしました」

 

 なるほど、そういうことだったか。


 強制的に独房かなんかにぶち込まれて1年間は監視下の元、魔術研究でもさせられると思っていたアナーヒターだったが、こうなるとかなり気分が軽くなる。


 「それで?私の任務っていうのは何なの?」


 だが、さすがに簡単で誰でもできるような任務ではあるまい。きっと危険で、困難で……それこそ単独でドラゴン討伐でもさせられるんじゃないか。


 しかし、任務内容もそれは意外であった。


 「今回、厄災討伐にも深く関わっているあのローブの者たちへの対処をアナタへの任務とします」


 「……まじかよ」


 これはドラゴン討伐なんかよりもヘビーな内容だ。


 直接戦ったことのあるアナーヒターだから言える。


 ローブの者達は四大聖に並ぶと言っても過言ではない強さを持っている。一人一人がそれほどの強さなのかは分からない。だがイルゼとアルウェスは四大聖並と考えても良いだろう。


 それらの対処というのは……。


 「具体的には?」


 「そうですね。まずは相手が組織か、個人か。目的は?組織ならば拠点は?規模は?それらの探索に捜索、そして可能ならば生死を問わず全員の捕縛をお願いします」


 「あー……なるほどね。まぁ、やるしかない…か」


 この任務に拒否権はない。


 ただ一つ、言える事がある。


 これがもしも任意で受けられるものであるならば……絶対にアナーヒターは拒否しているということだ。

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